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2009年6月

2009年6月28日 (日)

植草事件の真相とは

 最高裁は、東京都迷惑防止条例違反だとして植草一秀氏に有罪判決を言い渡しました。この件については本人がブログでも発信していますし、ネット上には植草氏を支持するさまざまな声があります。わかりやすい解説を二つほど紹介します。

「植草一秀教授は無罪だ」、検察が矛盾とわたしは見る

植草一秀さんを有罪にした裁判長とは 

 ネット上の具体的な解説などを読む限り、冤罪であり国策捜査としか思えません。「疑わしきは被告人の利益に」という原則が、またも無視された判断です。裁判長はどうしてこんな判決しか出せないのか? 裁判長の向いている方向がおかしいとしか思えません。

 有罪とするには不自然なことだらけなのに、大マスコミはどこも裁判の結論のみを淡々と報じているだけのようです。どうしてこの事件の不自然さを報じたり追求したりしないのでしょうか? マスコミは末期的です。多くの人がマスコミ報道を信じてしまうとしたら、本当に恐ろしいことです。

 以下は参考サイトです

植草事件の真相

植草裁判 最終意見陳述で無実訴える

植草氏は国策捜査の犠牲に? 「知られざる真実 拘留地にて」を読んで

「控訴審判決は不当」植草被告が上告へ

2009年6月26日 (金)

セブンイレブンの非道な商法

 つい先日、賞味期限の近づいた弁当などの値引き販売を制限したことが、独占禁止法の優越的地位の乱用に当たるとし、公正取引委員会がセブンイレブンに排除措置命令を出したことが一斉に報道されました。

 セブンイレブンの商法については週刊金曜日がその驚くべき悪質な実態について追求し、今も渡辺仁氏が「セブンイレブンの正体 鈴木敏文商法の『詐術』」として連載を掲載しています。他にも単行本が出ていますし、オーナーによって裁判も起こされています。JanJanなどインターネット上でもコンビニ関係の記事が掲載され、そのあくどい商法は知る人ぞ知るところとなっていたのです。今回、公取が調査に乗り出し排除命令を出したことでマスコミもようやく報道したのですが、大企業の違法行為を知りながら公取の決定がなければ何も記事にできないマスコミの、何とだらしのないことか。まあ、毎度のことですが・・・。

 今回の報道では、食べ物を粗末に扱う大量廃棄がことさらに問題として取り上げられました。もちろんそれは当然のことでとんでもないことなのですが、食品廃棄の問題は、セブンイレブンの非道で悪質な手法に端を発しているのです。マスコミには、その本質に切り込んだ報道こそ求められます。

 フランチャイズ方式のコンビニ商法では、一般的な会計方式とはまったく異なる特殊かつ異常な会計制度を取り入れています。廃棄が多ければ多いほどオーナーはリスクを負うのに対し、本部は利益が多くなる仕組みになっているので、本部はオーナーに対して大量の仕入れを求め、値引き販売を制限していたのです。このために多くのオーナーが食べられる食品の廃棄によって赤字に追い込まれるという大変な状態にありました。この会計システムについては、以下のJanJanの記事をお読みいただけたらと思います。

フランチャイズ・コンビニの裏側(1)売れ残り、万引き被害にも「チャージ」の怪

 週刊金曜日の連載では、本部がオーナーを支配して売上金を徹底的に吸い上げ、本部は決して損をしないという騙しの手法を詳述していますが、読めば読むほど恐るべき会社の体質が伝わってきます。本部によるピンハネ疑惑、ドミナント(近隣地域への集中出店。個々のコンビニの利益は減るが、本部への収入は増える仕組み)による潰し、提訴したオーナーへの監視や嫌がらせ、暴力行為などなど。この会社の悪質なやり方は到底容認できるようなものではありません。優越的地位の乱用は、なにも弁当の値引き販売だけではなく、本部によるオーナー支配の全体を貫いているといえます。

 本部がオーナーをひたすら食い物にするような非道な商法が永遠に続けられるとは思えませんが、それにしても公取の排除命令は遅かったとしか思えません。

 以下、JanJanから関連記事をいくつか紹介します。

フランチャイズ・コンビニの裏側(2)本部が加盟店の「会計帳票」返さぬ怪 

フランチャイズ・コンビニの裏側(3)加盟勧誘時に特に気をつけなければならないこと

名ばかりオーナーからの脱却 洗脳状態のコンビニオーナー

2009年6月25日 (木)

肱川に見る日本のダム問題

 先日「肱川 清流の復活を求めて」(有友正本編著、アットワークス)を読みました。

 欧米ではとっくにダムの撤去が行なわれているというのに、日本は今におよんでダムをつくり続けています。日本のダムをはじめとした河川の土木工事の裏側には利権構造が横たわっているわけですが、愛媛県の肱川をめぐる動きには日本のダム問題が凝縮されているといっても過言ではないでしょう。

 かつては清流を誇っていた肱川は、洪水にたびたび見舞われる「暴れ川」です。昭和21年から平成17年までの60年間に32回もの洪水を記録しているというのですから、大雨ですぐに氾濫する川といえるでしょう。ですからもともと洪水で浸水するような場所には建物などはなく、浸水する地区では高いところに建物をたてていたのです。

 昭和36年に肱川本流の鹿野川ダムが稼動しても洪水は減らず、昭和57年に鹿野川ダムの上流に野村ダムが稼動しても、治水の役には立たなかったそうです。ところが、しばしば洪水に見舞われる東大洲地区が平成5年に「八幡浜・大洲地方拠点都市地域」に指定されました。こうして、かつては「遊水地」の役割を果たしていたところに建物を建てるようになりました。しかも、堤防を未整備のまま開発を進めたのですから、平成7年には激甚水害と認定される水害に見舞われました。水害になるのは当然です。

 一方、肘川の支流の河辺川では、南予水源開発計画という利水(分水)計画がありました。その後、当初の利水はなくなったにも関わらず、治水へと目的を変えて造られようとしているのが山鳥坂ダムです。この国ではたとえ当初の目的が消失しても、目的を変更して何としてでも事業を押し通そうとするというのが常です。つまり、すべてにおいて「はじめにダムありき」で進められるのです。しかし、山鳥坂ダムの治水効果はとても小さいものであり、建設には大きな疑問が投げかけられています。肱川は、すでに二つのダムによって水質が悪化してしまったのに、さらにあまり効果の期待できないダム建設を推し進めようというわけです。

 流域委員会から住民を締め出して御用学者と自治体の長で構成し、絶滅危惧種や希少種が生息していても問題ないと無視し、治水計画を立てる際の基本高水流量の数値も過大に算出するというやり方は、この国のお決まりです(基本高水流量については「開発局の過大な基本高水流量」参照)。アイヌ民族の反対を押し切ってつくられ水害や漁業被害を招いた沙流川の二風谷ダムや、沙流川の支流に造られようとしている平取ダム、天塩川水系のサンルダム、その他諸々のダム計画・・・。日本のダムをめぐる問題はどこも同じといえましょう。本書からは、ダムによる弊害を真摯に受け止めずに建設に固執する国の姿と、それに抵抗する地域の人達の熱い闘いが伝わってきます。

 詳しく知りたい方は、是非、本をお読みいただけたらと思います。制作を手がけたロシナンテ社は、環境問題をはじめとした住民・市民運動を発信している会社です。以前「西宮冷蔵の闘い」という記事で紹介した「正義は我にあり 西宮冷蔵・水谷洋一の闘い」もロシナンテ社の制作した本です。

2009年6月24日 (水)

環境名目の補助金事業に疑問

 昨日の記事「ホタルの保護と放流」の続きです。

 6月17日のホタルの放流の記事、そして22日の放流中止の記事を読んで、世の「環境」意識というか、補助金のあり方、使い方について釈然としないものを感じました。

 ホタルの放流を計画した団体は、農林水産省が2007年から5年計画で始めた「農地・水・環境保全向上対策事業」の補助金を受けている全国1万9000の組織の一つだそうです。「農地・水・環境保全向上対策事業」とはどんな事業なのかを調べてみると、農水省の以下のページがありました。

http://www.maff.go.jp/j/nouti_mizu/qa.html 

 目的は「農地・農業用水等の資源や農村環境を守り、質を高める地域共同の取組と、環境にやさしい先進的な営農活動を支援する」ということです。具体的な支援活動の内容としては「農業者と地域住民など農業者以外の方も含めた多様な主体が参加して地域ぐるみで農地・農業用水等の適切な保全と併せて施設の長寿命化や環境の保全に取り組む共同活動への支援と地域でまとまって化学肥料や化学合成農薬の使用を原則5割以上低減する先進的な営農活動への支援を一体的に実施するものです。また、より高度な共同活動の取組に対して一定の支援を行います」とのこと。

 ここからは環境保全を重視した活動に対する補助金のように思われますが、実際にはかなり拡大的に適用されているようで、農道の整備に使うことも可なのです。新聞記事によると、ホタルの放流事業を計画していた網走の団体は今年2500万円の補助金を受け、ホタルの放流には200万円も予定していたとのこと。他には、歩道の花植えや農道の砂利敷きなどに当てるとのことです。ホタルの放流は昨日の記事に書いたようにとても環境保全とか水資源の保護といえるようなものではありません。歩道の花植えはどう考えても生活環境整備です。農道の砂利敷きも、農地の保全や環境保全とはいえないでしょう。

 そもそも農地や水、農業環境の管理・保全と自然環境の保全は意味合いが違うのですから、それを一緒にした補助金というのは不適切ですし、これでは対象となる活動も幅広く曖昧になってしまいます。ホタル放流の発想からは「補助金がもらえるから活動を考える」といった安易な思考が透けてみえます。

 この「農地・水・環境保全向上対策事業」の2007年度の予算を調べてみたら、302億8600万円だそうです。減農薬の支援など、適用範囲を明確にした補助金政策ならわかりますが、これでは「環境」名目に、ばら撒きがなされているとしか思えません。

2009年6月23日 (火)

ホタルの保護と放流

 北海道では今頃の季節になると、毎年のようにホタルの復活を目指して幼虫などを放流する活動が話題になります。6月17日の北海道新聞に、地域の農家などで組織する網走西部地区資源保全協議会が、飼育されたヘイケボタルの幼虫1000匹を購入して能取湖に注ぐ卯原内川に放流することを計画したものの、研究者から中止するよう求められたという記事が掲載されていました。新聞で取り上げられたためか、22日の道新では放流が中止されたことが報じられていました。

 他の地域のホタルを放流して復活させようという手法は、問題が多くあまりにも安易です。ホタルの保全を考えるのであれば、まずその地域からホタルがほんとうに姿を消してしまったのかどうかを調べ、生息しているのであればその生息環境を保全するというのが本来の自然保護、環境保全です。また、いなくなってしまったのならその原因を探る必要があるでしょう。棲めなくなったところに放流しても定着はできないはずで、このようなやり方は環境保全ではありません。新聞には住民組織の代表が「ホタルが育つ環境を取り戻し、安心・安全な農業を子供たちに引き継ぎたい」とのコメントを寄せていましたが、安心・安全な農業を目指すのであれば減農薬などに積極的に取り組むべきでしょう。

 ホタルの放流は、新聞でも指摘されているように遺伝子撹乱の問題があります。ヘイケボタルのように移動能力の小さい昆虫は、地域ごとに遺伝的に異なっていることがわかっています。ホタルの場合、光の点滅速度などが地域によって異なっているそうです。卯原内川にも在来のヘイケボタルが生息しているとのことですが、他地域産のホタルと交雑したら、在来の個体群の遺伝的多様性を撹乱してしまうことになります。これは生態系の撹乱にほかなりません。卯原内川では昨年は幼虫の餌としてカワニナを撒いたそうですが、ヘイケボタルの餌は、本来はモノアラガイなどの在来の巻貝ですから、これも問題です。在来のホタルが生息しているなら、なぜその環境を保全しようとしないのでしょうか?

 夏の夜にホタルがほのかな光を放つ光景を蘇らせたいという気持ちはわかるのですが、どういうわけか「ホタル」といえば「飼育した幼虫の放流」という発想になるようです。これまでのマスコミ報道は放流を肯定的に捉えているものばかりでしたので、今回の研究者からの指摘を盛り込んだ記事は評価できます。地域に生息する生物の遺伝的多様性を保全するという問題は、ホタルに限ったことではありません。植樹などに使う苗木なども同様です。これをきっかけにマスコミも環境保全や生物多様性について理解し、意識を変えてほしいものです。

2009年6月22日 (月)

シマンテックの架空請求に注意!

 ここ3年ほどシマンテックのウイルス対策ソフトを利用していたのですが、今年から他社のものに変えました。ノートンは重いし、遅いし、高額のわりに使い勝手がいいとは思えなかったからです。有効期限の少し前にノートンをアンインストールして他社のソフトをインストールしたのですが、何とVIZAカードの利用明細を見たらシマンテックから請求がきているのです。もちろん電話で抗議して返金ということになりましたけど。

 いったいどういうこっちゃ! と思ってネットで調べてみると、同じような事例がいろいろ書かれていて、皆さん怒り心頭のようです。アンインストールしたのに請求がきたとか、パソコンを買い変えてノートンを使っていないのに請求がきたとか。そりゃそうですよね。実際にダウンロードしていないのに請求がくるのですから。

 こうしたトラブルが発生するのは、どうやらダウンロード版の場合「自動更新」の設定になっていて、その設定を解除しない限り自動的に更新されカードに課金されるシステムになっているためだということがわかりました。不正や不当な請求があっても気がつかなかったら、それでおしまいです。気がつかない人がいるというのを見込んでやっているとしか思えません。シマンテックとしても、クレームがきたら「返金します」といえば、それ以上は追及されないでしょうし。

 そこでJanJanにことの顛末を書きました。以下、お読みください。

驚くべきシマンテック社架空請求の手口

 シマンテックの製品は二度と使いたくないですね。それからカード決済は極力利用しないほうが賢明のようです。それにしても、マスコミがこのような問題をほとんど報道しないのはなぜなのでしょうか?

2009年6月21日 (日)

エコポイントのどこがエコなのか?

 エコポイントというおかしな制度がスタートしました。省エネ家電を購入すると購入者に一定のポイントがつき、そのポイントを商品やサービスと交換できるとのことです。北海道では、乗り物などのカード乗車券や商品券、旅行券や宿泊券など271件が交換の対象となったそうです。

 新しい製品をつくるために多大な資源やエネルギーを使っているのです。買い替えによって古いものを廃棄したなら、処理するコストやエネルギーもかかってきます。環境問題を重視するなら、まずは今使っている製品をなるべく長く使うことを考えるべきです。メーカーは壊れにくい製品をつくって古い製品でも修理する体制を整え、消費者はできるだけ修理して長く使うほうがよほど環境への負荷は小さいはず。そして、新商品には基本的に一定基準の省エネを義務化すれば、省エネ製品をとりたてて推奨する必要はありません。

 エコポイントを商品やサービスと交換するということは、要するに消費を増やすということです。しかし、消費すればエコなのでしょうか? 公共交通機関の乗車券に交換したからといってマイカーでの外出を控えることにはならないでしょう。商品との交換もおおよそエコとはいいがたく、単なる景気対策としか思えません。

 名称にも目的にも地球温暖化対策を掲げているエコポイントですが、どう考えても地球温暖化対策になるとは思えません。

 最近つくづく思うのは、日本人の多くは本当に必要とは思えない雑多な商品の山の中で生活しているということです。しまい込んだまま使っていないものの何と多いことか。まだ着られる衣類を処分しては新しいものを購入するという生活をしている方も多いのではないでしょうか。何でも手に入るようになり、消費を煽られ、ついつい不必要なものまでいろいろ買い込んでしまう生活が当たり前になっていないでしょうか。そういう生活を見直したほうが環境への負荷を減らすことにつながるでしょう。

 エコポイント制度の関連予算は約3千億円だそうです。定額給付金といいエコポイントといい、政府のやることはばら撒きでしかありません。

2009年6月20日 (土)

えりもの森の皆伐は疑惑のデパート

 19日は「えりもの森裁判」の口頭弁論でした。前回は4月17日だったのですが、ブログ非公開事件のために報告していませんでしたので、今回まとめて報告します。

 4月の原告の準備書面では「請求の変更」と「ナキウサギ生息地の破壊」について論じましたが、今回、それに対して被告からの反論がありました。前回と今回の口頭弁論での論点は、「越境伐採問題」と「請求の変更」についてです。

 越境伐採については「越境伐採疑惑と林班図」「越境伐採の隠蔽工作?」に書きましたので、詳細はそちらを参照してください。原告は、林班図の区画を超えて伐採していることを越境伐採であり違法行為だと指摘しているのですが、被告はこれに対し「平成13年の時点で基本図が変わっていた」と反論しました。林班の基本図が変更されて区画の線引きが変わっていたという、驚くべき主張です。

 森林の区画(林班や小班)は森林管理の基本となるもので、森林の戸籍ともいえる森林簿も小班ごとに記載されています。したがって、特別な事情がない限り簡単に変更するようなものではありません。区画を変更したなら、森林簿に記載された小班の面積や蓄積量も書き換えなければならないはずです。いったいどんな理由があって、そんな面倒な変更をしなければならないのでしょうか? 皆目見当がつきません。私には、困り果てた末の言い訳としか思えません。

 さて、この「えりもの森裁判」は、たまたまえりもの道有林に調査に入っていた自然保護団体のメンバーが、天然林の皆伐と作業道によるナキウサギの生息地の破壊を発見し、それが違法であるとして住民監査請求をしたことがはじまりです。監査請求が不受理とされたために住民訴訟を起こしたのです。このときの請求では、「日高支庁長が、契約を締結した支庁長個人に損害賠償の請求をせよ」としていました。ところが、その後の原告らの調査や裁判の中で、次々と問題の詳細が明らかになってきたのです(それらについては、このブログのカテゴリー「えりもの森裁判」で報告しています)。たまたま見つけた伐採について深く追求していったら、伐採と植林がセットとなった、まるで疑惑のデパートともいえる道有林施業の実態が見えてきたのです。

 そこで原告らは、法律構成をより具体的にするために4月に「訴えの変更」をしました。当初は「契約及びその履行」に違法があったと主張していたのですが、日高森づくりセンターのセンター長への監督義務違反や履行全体(一面を伐採したこと)に対する損害賠償など、請求内容をより具体的にしたのです。ところが、被告はこの変更を認めないと主張しました。

 原告としては、違法な事実には変わりがないので、被告が変更を認めないことに正当な理由はないと考えています。被告は裁判によって次々と明らかになってきた疑惑、すなわち原告らの詳細な請求内容に反論できないために、請求の変更を認めたくないのでしょう。今回の被告の主張に対し、次回に原告が反論します。その後は、被告である北海道がこれまでの原告の主張に対して反論し、双方の主張が出揃った段階で立証に入ることになります。

 2005年の末に提訴したこの裁判も3年半が経過し、違法性の主張はほぼ終わって最後の段階に入ります。これまで道有林でどのような施行が行なわれていたかは、一般の人に知られることがなくベールに包まれていました。裁判でその実態に切り込んだことで「疑惑のデパート」が次第に明るみになってきたのです。そのような意味で、原告としては画期的な裁判だと思っているのですが・・・。

2009年6月17日 (水)

本音と建前

 6月15日の北海道新聞夕刊の「魚眼図」に掲載された熊谷ユリヤさんの「思いがけない質問」という、本音と建前を使い分ける日本人について書かれた一文を読んで、正直いって寒気を覚えました。「思いがけない質問」とは、アメリカ人の交換留学生が授業で発した「日本人にとって、ホンネとタテマエを使い分けるのは苦痛(painful)じゃないですか」という質問を指しています。この質問に、日本人学生は一瞬沈黙したあと大爆笑したそうです。 なぜ大爆笑なのか・・・。

 熊谷さんは、日本人の本音と建前の使い分けについて「幼いころから知らず知らず身についていくので苦痛は無い」「相手の立場に配慮し、所属する集団の価値観を守り、集団から疎外されないための手段」「日本的対人関係の潤滑油」等と説明しています。私は基本的に本音と建前を使い分けることに馴染めないタイプであり、熊谷さんの説明にすんなりと頷けません。

 この一文を読んで思い出したのが、大雪山国立公園に計画された士幌高原道路の反対を巡ってのできごとです。地元の士幌町の農協はこの道路を「悲願」として推進していました。そして農協は事業者による説明会など、ことあるごとに送迎バスを出して組合員を動員したのです。私は事業者である帯広土木現業所の開催した地元説明会に出席したことがありますが、若者から杖をついた高齢者まで動員されてきていました。私が反対の立場から意見を述べると、会場から野次と怒号が飛び交うという凄まじさでした。

 では、動員されてきた人達は本当に道路が必要だと思っていたのでしょうか? あの異様な会場の雰囲気に何も違和感を覚えなかったのでしょうか? そんなことはないはずです。中には必要がないと思っていた人もいたでしょうし、仕方なく参加した人もいたでしょう。なぜなら組合員が農協に逆らうことは、農家の死活問題に関わってくるからです。自分の生活を守るために本音と建前を使い分け、表向きは推進の立場をとらざるを得ない状況があったことは確かでしょう。農協は優位な立場を利用して、組合員を動員したのです。

 地元の人にとって、本音や良心に従って士幌高原道路に反対の意見を公然と述べることは極めて困難なことであり、本音を隠して賛成しているふりをしている方がはるかに楽なことなのです。つまり「相手の立場に配慮し、所属する集団の価値観を守る」ためというより、自分のために使い分けをするのです。

 しかし、そのような組織のやり方をおかしいとは思わないのでしょうか? 本音を隠して知らんふりをすることに心が痛まないのでしょうか? 本音と建前の使い分けは、往々にして「潤滑油」としての働きを通り越し、歪みや精神的苦痛を生み出します。留学生はそのようなことを「苦痛」と表現したのではないでしょうか? 日本人学生がそうした感覚に寄り添うことなく大爆笑することに、私は少なからぬ不安を感じます。

 「相手の立場に配慮する」「集団の価値観を守る」という説明は、とても聞こえはいいのですが、私には都合のいい解釈としか思えません。相手の立場に配慮するのは大切ですが、そのことと自分の考えを主張することは別のことです。集団の価値観とは、集団の構成員の考えによって形成され社会情勢とともに変化していくものであり、自分を殺して守るものではないはずです。

 権力者にとって、個人が本音と建前を使いわけて従ってくれることはとても都合がいいことです。本音と建前の使い分けに何の疑問も持たず、多数派に合わせて安心している日本人は、結局は権力者の意のままに利用されるのではないでしょうか。

2009年6月16日 (火)

いそうでいないイソコモリグモ

 12日から13日にかけては、オホーツク海側の斜里から紋別にかけて海岸線をたどってイソコモリグモの生息可能なところをチェックし、15日は太平洋側の白糠から浦幌十勝川までの間を調査しました。先の道北と十勝の調査と合わせ、北海道の大きな生息地はだいたい見たことになります。

 これまでの経験から、イソコモリグモが生息できる海岸の環境がだいたいつかめるようになってきました。イソちゃんが生息するためには、砂浜があればいいというわけではありません。まばらに海浜植物が生育する砂浜が必要なのです。砂丘が浸食されて段丘化し、段丘のすぐ下まで波に洗われるようなところには生息できません。海浜植物帯は広いほうがいいのですが、線状にしか分布していなくても生息は可能です。

 ところが「ここなら生息できる」と思える環境でも、実際に探してみると巣穴がまったく確認できない場所もあるのです。15日に調査したところでは、浦幌十勝川の左岸と馬主来(パシュクル)沼の海岸がそうです。これらの場所は前回の調査でも巣穴が確認できませんでしたから、「見落とし」というより「生息していない」といえそうです。では、なぜいないのでしょうか?

Dscn5017  浦幌十勝川では、砂浜からかなり内陸に古いテトラポットが砂に埋もれていました。馬主来沼の海岸は、過去の地形図では段丘状になっていたことがわかりますし、半ば砂に埋もれたブロックが入っています(写真)。ということは、かつての海岸線は今より内陸側だったのではないかと思い当たったのです。そこで古い航空写真を見てみると、確かに海岸線が大きく動いていることがわかりました。これらの場所では、かつて陸側に後退した海岸線が、今では前進しているのです。浸食によって生息適地がなくなり絶滅してしまった海岸に、何らかの要因で砂が堆積してふたたび生息可能な状態になったといえそうです。近隣の生息地からは川や崖によって隔離されているために、分散してくることができないのでしょう。

 生息適地があるから生息している可能性が高いとはいえないようです。海岸線の変化に伴う絶滅を考慮しなければならないということです。

2009年6月14日 (日)

無意味な森の中の視線誘導樹

 視線誘導樹というのをご存知でしょうか? 北海道の道路では、吹雪などで視界不良になることがありますが、その対策として視線誘導標やスノーポールなどが道路脇に設置されています。同じ目的で、道路脇に一定間隔で樹木を植えることがあり、それを視線誘導樹と呼んでいます。景観や環境への配慮を目的として導入されているようです。

P1000224  12日に斜里方面に出かけたのですが、国道縁に視線誘導樹としてアカエゾマツが植えられているのに気づきました。開けたところに視線誘導樹を植えるのはわかるのですが、写真のように周りが森林になっているところにまでアカエゾマツが植えられているんですね。周りの樹木と紛れて、視線誘導樹の意味をなしていません。道路の位置を示すことが目的なのですから、道路脇が森林になっているところに視線誘導樹を植える必要などなく、無駄な植樹としか思えません。

 電線の真下に植えているところもありましたが、成長したら梢を切らなければならないでしょう。上に電線があることくらい気づくと思うのですが、首を傾げてしまいます。ただマニュアル通りに等間隔に植えているとしか思えないのですが、開発局は業者に植樹を委託するにあたって、事前に周囲の環境や状況を検討して指示をしていないのでしょうか? 樹木は人工的な誘導標やスノーポールと違って生物なのです。環境を謳って視線誘導に樹木を取り入れるのであれば、周りの状況を把握して植えるべきでしょう。

2009年6月11日 (木)

地に墜ちた新聞業界

 ジャーナリストの黒藪哲哉氏による、新聞の「押し紙」問題、波紋を呼んでいるようですが・・・。

「1日1350万部がムダに!?」“新聞社最大の闇”である押し紙と販売店の悲鳴 (日刊サイゾー)

 どうやら、毎日とてつもない量の新聞が廃棄されているようですが、こんな無駄と不正がまかり通っているとは開いた口がふさがりません。マスコミの恥部に触れることであり、タブーなのでしょうけれど、この国のマスコミの構図は末期的ですね。新聞業界が大変だということはよくわかります。若い人は新聞を読まなくなってきていますし、この不況に加え、インターネットが普及して新聞離れは進んでいるのでしょう。しかし、これはあまりにも酷い。

 黒藪氏は、週刊新潮にも押し紙問題を書き、これに新聞社が反発しているそうです。そういえば毎日新聞は「環境の毎日」といわれているそうですが、その毎日の押し紙率は一番高いとか・・・。無駄な新聞をつくるために資源やエネルギーを浪費している新聞社が、環境問題を論じる資格があるのか・・・。

新聞業界最大のタブー? 週刊新潮が「押し紙」特集記事 (J-CATニュース)

 この記事によると、朝日・読売・毎日の3社が週刊新潮に抗議文を送付したそうですが、事実ではないと言い張るなら、紙面で反論すべきことじゃないでしょうか? 「特に毎日新聞については、損害賠償請求を含む法的措置を検討することも明らかになっている」とのことですが、こんなことで裁判を起こすなら恫喝訴訟でしょう。マスコミが恫喝訴訟を起こしても、マスコミはそれを報じないからいいとでも思っているのか? 毎日新聞については黒藪氏の以下のような記事もありますから戦々恐々ということなのかもしれませんが、なんとも見苦しいですね。

偽装部数45%の販売店主が告発 闇金融まがいの新聞ビジネス (My News Japan)

 日本の新聞業界は地に墜ちたといえそうです。

2009年6月10日 (水)

開発局の過大な基本高水流量

 北海道新聞の夕刊の連載「私のなかの歴史」で、北大大学院教授の小野有五氏が取り上げられています。この6月5日付けの記事で、千歳川放水路の根拠とされた「基本高水(たかみず)流量」が過大に算出されていたことが語られています。

 基本高水流量とは、ある降雨量において川にどのくらいの水が流出するかを算出したものです(ダムや遊水地など、洪水を調整する施設がない場合の流量を「基本高水流量」それらの施設によって洪水が調整された場合の流量を「計画高水流量」といいます)。

 千歳川放水路で、どうやって「過大な数値」を出したのかが上述の新聞記事でわかりやすく説明されています。千歳川放水路計画では、3日間の降雨量を260ミリと想定していました。これは史上最大といわれる1981年の3日間で282ミリより少ない雨量です。ところが、基本高水流量は毎秒18000立方メートルと、1981年の12000立方メートルの1.5倍もの数値になっていたのです。なぜ少ない雨量でありながらこのような過大な数値になったかといえば、短時間に猛烈な雨が集中的に降った1975年の降り方のモデルに、3日分の想定雨量をはめ込んで、一気に大量の水が出るパターンを作り出していたということなのです。

 基本高水流量の過大な算出は、もちろん千歳川放水路に限ったことではありません。たとえば、サンルダムの計画されている天塩川では、3日間で233ミリの大雨が降ったときの流量は毎秒4400立方メートルでしたが、予測では3日間で224ミリの大雨で毎秒6400立方メートルの水が流れるという計算になっています。当別川では、3日間で270ミリの大雨が降ったときの流量は毎秒720立方メートルでしたが、予測では3日間で230ミリの大雨で、1350立方メートルの水が流れるという計算になっているのです(2009年3月14日の札幌弁護士会主催によるシンポジウム「川は流れる」の資料より)。開発局の予測は、実績の約1.5倍もの数値になっているのです。

 要するに、現実的とはいえない数値を基本高水流量とし、それを基準に治水計画をつくるというのが国の手法です。数字操作ともいえる過大な流量予測によって、必要のない公共事業をつくりだしているといえましょう。これについては、ダム問題に取り組んでいるジャーナリストのまさのあつこさんのサイトでも指摘されています。

 十勝川の相生中島地区でも、治水対策のもとに巨額の税金を投入して水路の掘削(ショートカット)が行なわれようとしていますが、この事業も過大に算出された高水流量をもとに計画されたのではないかという疑いを私は抱いています。なぜなら、1981年の未曾有の大雨でも帯広市は洪水被害に見舞われなかったのですから。

2009年6月 9日 (火)

クマが通り抜けたベア・マウンテンのフェンス

 十勝のサホロリゾートにあるヒグマの放牧施設「ベア・マウンテン」のフェンスをはじめて見たときには、「シカやキツネならともかく、ヒグマを飼う施設のフェンスなのか?」と目を疑いました。電気柵を設置し、柵を二重にしているとはいうものの、金網製のちゃちなフェンスなのですから。十勝自然保護協会では、開園前から許可を出した十勝支庁や事業者の加森観光に、さまざまな疑問点ついて問いただしてきました。しかし十勝支庁は「『北海道動物の愛護及び管理に関する条例施行規則』で定める施設基準に適合しているかどうか審査し,また現地調査し,適合したものであると判断したところであります」として、許可が適正であったと主張しました。

 ところが、開園後まもなく外部から視察したところ、外周フェンスにクマが容易に通り抜けできる大きな空隙があったことを発見したのです。そこで再度、質問書を送付したのですが、回答期限を2週間もオーバーして届いた回答も、先の回答と基本的に変わらないものでした。現地調査をしているのに、クマが通り抜けできる穴のあるフェンスが、条例で定める基準に適合しているというわけです!! その後、この空隙には事業者によって金属製の格子が取り付けられました。

 これで問題がなくなったかといえば、とんでもありません。実は、冬季閉園中に野生のヒグマが二重のフェンスの間に入り込み、外周フェンスを通り抜けてしまったとの情報がありました。この件について十勝支庁に質問書を送付したところ、ヒグマの侵入についてはあっさりと認め、フェンスを通り抜けたことも否定しませんでした。穴を塞いでも、ヒグマが通り抜けできるフェンスだったことが証明されたといえましょう。これは、フェンスが条例で定めた基準を満たしていなかったことを意味します。常識的に考えたなら、許可を取り消さなければならない事態ではないでしょうか。

 で、十勝支庁に見解を求めたのですが、「サホロリゾート ベアマウンテンのヒグマ飼養施設については、動物愛護及び管理に関する法律の基準に従い、飼養しているヒグマの逸走を防止出来る構造及び飼養の方法について支障無いことを確認し、許可しております」という回答が、質問をした翌々日に返ってきました。都合の悪いことには一切答えず、「臭いものに蓋」をするかのような回答です。この許可の件は、十勝支庁にとってよほど都合が悪いことなのでしょう。

 この問題については、JanJanの以下の記事も参照してください。

自然な生態展示できるのか 北海道・新得町に建設中のヒグマ放牧施設 

餌の与え方、安全性に疑問残る北海道のヒグマ放牧施設「ベア・マウンテン」

危ういフェンス・ヒグマ放牧施設「ベア・マウンテン」

北海道ヒグマ放牧施設 「ベア・マウンテン」は条例違反か

2009年6月 8日 (月)

崩れる皆伐地

P1000209  6日に、タウシュベツ(大雪山国立公園内)の皆伐地に調査に入りました。トドマツの苗を植林してから二度目の夏を迎えるのですが、昨年はほとんど生長していません。大半の苗は頂芽が枯死し、葉の色も生気がなく黄緑色をしています。完全に枯れてしまった苗も多数ありますし、崩れてきた土や岩屑(がんせつ)に半ば埋もれている苗もあります。苗は列に植えているのですが、消えてしまった苗もあります。

P1000216  このあたり一帯は岩屑が堆積した上に森林が成立しています。したがって、森林を皆伐して表土を剥がすと、そのすぐ下の岩屑がむき出しになり、ガラカラと崩れることになるのです。タウシュベツの皆伐地はかなり急斜面ですから、安定した角度になるまで何年にもわたって崩落がつづくことになるでしょう。今年は、昨年に比べて崩落が目立ってきたようです。

P1000212  斜面が絶えず崩落していくために、表土が残されていた部分も、少しずつずり落ちていくことになります。雨などによって絶えず岩や土が動いていくので、まわりから樹木の種がとんできて発芽しても、土ごと流されてしまい簡単には定着できません。たとえカンバなどがうまく定着できたとしても、カンバの若木はシカの食害を受けますので、盆栽のようになってしまい大きく生長できない可能性もあるのです。

 大規模林道の建設予定地を視察した時も、「岩なだれ」が生じて沢が岩屑で埋まっている所がありました。斜面に作業道を切ったことが原因で、一部の斜面が崩れ落ちたようです。岩屑が堆積した斜面に重機を入れて壊すと、取り返しのつかないことになってしまいます。林野庁は、「風倒木処理」の名目のもとに、やってはいけないことをやってしまいました。

2009年6月 7日 (日)

畦道まで除草剤汚染

P1000163  私の居住地の近くには水田がないのでこれまで気がつかなかったのですが、道北に出かけた際、畦道に除草剤が撒かれて草が赤茶色に枯れているのが目につきました。今では畦に除草剤を撒くのはごく普通に行なわれているようです。畦といえば、かつては人力で畦塗り(水が漏れないように畦の側面に泥を塗って固める作業)や草刈をし、こまめに管理していたはずです。しかし今では畦塗りも機械化され、畦に除草剤を撒くのが当たり前になってしまったのか・・・。

 畦道に除草剤を撒いたのなら、当然、水田にも除草剤が流れ込むはずです。本来、草の生えているはずの畦が、赤茶色に枯れている光景は異様で寒々しいものを感じます。

 水田は今や機械化によって田植えから除草、薬剤散布、収穫まで機械で作業をするようになりました。そのためにひとつの区画は大型化し、一軒の農家が広い水田を管理するようになりました。こうなると、畦道の管理にまで労力をかけていられないということなのかもしれません。畦に雑草がボウボウと生えているか、除草剤で赤茶色に枯れているかのどちらかのようです。今では、草刈をして畦を管理している農家は少数派なのでしょうか。

 以前、畑作農家の女性たちが、除草剤を撒くタイミングについて得意げに話をしていたのを聞いて、ゾッとしたことがあります。農薬に頼るようになると、それが当たり前になり、問題意識を持たなくなってしまうのかもしれません。そして、いかに適切なタイミングで除草剤を撒くかが大事なことになってしまうのです。

2009年6月 5日 (金)

足利事件から見える自白強要

 足利事件で無期懲役が確定していた菅家利和さんが逮捕から17年ぶりに釈放されました。17年間もの間、無罪の人を拘束したことに対する捜査機関と裁判所の責任は、はかり知れないものがあります。菅家さんの釈放は心から喜ぶべきことです。しかし、失われた時間や尊厳は取り戻すことができません。また、冤罪を主張しながら認められずに死刑が執行されてしまった方、刑に服している方や拘留されている方たちがいると思うと、とても複雑な気持ちになります。

 少し前に安田好弘弁護士の「死刑弁護人」(講談社文庫)を読みました。そこに登場するのは、人権を完全に無視したすさまじい取調べや自白強要によってつくりだされた冤罪事件、検察のストーリーに沿うようなでっちあげや証拠隠滅など、背筋が凍りつくような捜査機関の実態です。辻褄の合わない検察の主張を覆すべく、あらゆる手をつくす弁護士の姿勢に深く共感する一方で、理解できない不当な判決を下してしまう裁判官に、この国のゆがみを感じずにはいられません。

 死刑廃止を訴え、死刑弁護人として検察と真っ向から対峙する安田弁護士は、検察によって事件をでっちあげられ逮捕・拘留されるのですが、そういう事実自体が検察の恐るべき暴走を物語っています。凶悪事件の被告弁護人として、冤罪被害者として、安田弁護士ほど警察や検察のおぞましき実態を知り尽くしている方もいないのではないでしょうか。

 足利事件も、そうした警察・検察の暴挙が作り出した冤罪でしょう。ただし、DNA鑑定という科学的手法が適用されたからこそ勝ち取れた冤罪です。このような証拠がない冤罪被害者が、救われるわけではないということを忘れてはなりません。

 腹立たしいのは、4日の北海道新聞夕刊に掲載されていた元捜査幹部のコメントです。元栃木県警幹部は「捜査は妥当だった」とコメントし、当時の刑事部長は「無罪が確定したわけではない。問題はこれから。法律に基づいて妥当な捜査をし、自供も得ている。(菅家さんが)やったと信じている」と話したそうです。捜査機関が、菅家さんの苦痛と怒りを真摯に受け止めようとせず、自分たちの面子にこだわりつづける以上、冤罪はなくならないでしょう。こんな悲惨な冤罪を生まないためにも、取調べの可視化は絶対に必要です。

 警察の裏金を告発した元愛媛県警の仙波敏郎さんが、5月29日号の週刊金曜日の「警察はヤクザと同じ犯罪組織だ」という記事で、こんな発言をしています。「・・・警察にとっては有罪だろうが無罪だろうがどっちでもいいんですね。なぜなら、一人逮捕したら架空の『情報をもたらした協力者』をつくって、二万円渡したことにできる。それを五人くらいに増やせば10万円になって、『捜査費用』という名目で結構な額の裏金に回せますから。それでとにかく身柄がほしいんですね、有罪かどうか分からなくても」

「裏金をつくるために身柄が欲しい」「有罪か無罪かはどうでもいい」という感覚で無実の人が犯人にされ、自白を強要されたのではたまったものではありません。

 自白については、JanJanに興味深い報告があります。日本の事例についても触れられているので、是非読んでいただきたいと思います。

講演「なぜ、無実の人が自白するのか?-アメリカの虚偽自白125事例が語る真実-」に参加して

2009年6月 4日 (木)

ダムがもたらすもの

 昨日の記事の続きです。

P1000093  この写真は、羽幌川を渡ったときのものです。あまりのひどい光景に、思わず橋の上から写真を撮ってしまいました。奥に堰があるのが見えますが、ここは堰のすぐ下流です。堰を造ったために河床が低下し、こんなふうに基盤が露出してしまったのです。

P1000092  こちらは、下流側です。左側から支流が流れ込んでいますが、河床が著しく低下してしまったために、合流点では滑滝のようになって本流に注ぎ込んでいます。これを見れば、誰もが不自然な川であることを実感できるでしょう。ダム・堰によって川はすっかり変えられてしまいました。

 多くの方に知っていただきたいのは、こうしたダムの影響がいろいろなところに波及していくということです。決して他人事ではありません。

 稗田一俊さんのサイトから、その影響について引用させていただきます。

 「ダムがある川から魚がいなくなるだけでなく、ダムのある地域全体にも被害がでてきます。ダムに起因する川底の低下は、川岸の崩壊を招きます。そして川沿いの道路や農地・宅地などが崩壊するようになります。川岸が大量に崩壊すれば、発生した土砂が一時的に短時間で川底に堆積するために、川底が急速に上昇し、川から水が溢れる洪水被害にもつながります。ダムを造っては被害がでて、被害がでたら補修工事をする。その補修した場所は次の大雨で崩れて、再び、同じ場所の補修工事をする。その繰り返しになり、被害がどんどん広がっていくのです。ダムは人命財産に及ぶ被害を多発させ、川にすむ魚の数を減らし、海に流れ出した泥水は沿岸の水産資源をも枯渇し、取り返しのつかない事態を招く元凶であることが見えてきます」

 サンルダム、平取ダム、当別ダム・・・。税金を投入し、「無駄」どころか「自然を破壊し、災害の元凶となる」ダムを今でも造ろうとしていることを、私達はしっかり認識しなければならないでしょう。

2009年6月 3日 (水)

河床低下と河岸崩壊

 先日、遠別川に行ったときに河床が低下している様子がよくわかる場所がありました。「河畔林は障害物か?」でも触れたように、河床低下による河岸の崩壊と流木の発生のしくみがよくわかるところだったので、紹介します。

P1000160  ここでは少し上流に堰があるため、砂利が堰で止められています。川底の砂利は大雨などによって絶えず流されていくのですが、堰の下流では砂利が供給されなくなり、川底にあった砂利は下に運ばれていきます。このために河床が削られて川底が低くなってしまうのです。すると河岸は段丘化して土がむき出しになります。大雨などで水量が増すたびに、河岸が浸食されて削られていくので、段丘の際に生えているヤナギは根が洗掘されて川に倒れ込み、流木となるのです。

P1000161  中洲を見てください。中州にはヤナギが生えていますが、中洲の縁は段丘化していないのでヤナギの根は洗掘を受けません。このようなヤナギ林は大雨で増水しても簡単には流されないのです。河畔が段丘化しておらず、この中洲のような状態だったなら、増水によって河畔林が流木化することもないでしょう。

 ダムのない自然の河川なら、このような不自然な川岸にはならないはずです。こういう状態になると、増水のたびに河岸から土砂が流れ出るので、大雨ですぐに川が濁るようになるのです。

 河川を管理する開発局は、ダムや堰による河床低下と河岸崩壊の現状をきちんと理解しているのでしょうか? 河床低下の現場を見ているはずですから、知らないとはいえないでしょうね。写真の通り、一目瞭然なのですから。流木が発生する原因を突き詰めるとダムという不都合な真実に突き当たってしまいます。その不都合な真実から目をそらせ、河畔林の間引きで誤魔化そうとするのであれば、責任逃れの愚かな行為でしょう。

2009年6月 2日 (火)

破壊されたイソコモリグモの生息地

 31日から1日にかけて、また道北に行ってきました。このところ毎週のようにイソコモリグモの調査です。

Tesiohakaigo090531  ここは天塩町の海岸で、このあたり一帯はまだ生息ができそうな環境が残されています。昨年のデータをチェックしながら、海岸線の様子を確認していきました。昨年イソコモリの巣穴を確認していた場所に行ってみると、写真のようにブルドーザーによって海岸が改変されており、イソコモリが棲めるような状況ではありません。「あれれ!? 去年は確かここに巣穴があったのに・・・」

 家に帰ってから、昨年の写真と今年の写真を見比べてみました。

Tesiohakaimae080503  これが、同じ場所の昨年の写真です。海岸は浸食によってやや段丘化しているのですが、昨年までは海岸には人手が加えられてはおらず、自然のままの状態でした。写真のように海浜植物がまばらに生えている砂地があり、ここで巣穴が確認できたのです。

Boufuurinsita090531  この地点から南は写真のように海岸に沿って防風林が造られており、柵で囲まれています。ところが海岸浸食が進んで、防風林の際まで削られてしまいました。そこで、防風林が浸食されないようにブルドーザーで斜面をつくって植物で覆い、斜面下にブロックを入れているのです。昨年までは人工的な斜面は防風林のあるところまでで、ここから北は自然のままだったのです。ところが、今年はそこにもブルドーザーが入り、南側と同じように人工的な斜面が造られてしまったのです。そのうち、砂浜にテトラポットが並べられるかもしれません。

 恐らくこの工事は今後も延びていくと思われますので、生息地が年々破壊されていくことになるでしょう。このようにして海岸線は少しずつ人工的になり、生息地が分断化され縮小していくのです。

 工事をした人達は、ここに絶滅危惧種が生息していたなどとは思ってもいないのでしょう。

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