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2009年2月 9日 (月)

不思議な「心得」

 NPO法人リタイアメント情報センターの自費出版部会では、「自費出版失敗しないための心得」という冊子を作成して、全国の消費者センターや書店などに配布しています。自費出版部会長である渡辺勝利氏は、この冊子の責任者といえます。

 さて、私はこの冊子を見ていろいろな疑問が湧きました。

 この冊子は、表紙と裏表紙(裏表紙はリタイアメント情報センターの紹介)を除く中身が22ページです。はじめの1ページは前書き、次の3ページは「自分の本を書店に並べたいと思っている人のための自己診断シート」とその見方、続いて「消費者保護のための自費出版営業・契約ガイドライン」が4ページ。残りの14ページは賛同事業者(11社と2団体)の紹介です。半分以上が事業者の紹介…。そして前書きには「自費出版に関心のある方は本冊子を参考にして、できるだけ目的にかなった出版社を見つけ、有意義な成果を上げてほしい」としています。NPO法人は公益的・非営利活動を行なう団体のはずですが、多数の自費出版業者がある中で特定の企業や団体の宣伝をするのであれば公益的な活動とはいいがたいのではないでしょうか。

 自費出版部会では消費者向けに「消費者のための流通させる自費出版チェクリスト」を、事業者向けに「消費者保護のための自費出版営業・契約ガイドライン」を作成しています。ところが、この冊子に掲載されているのは事業者向けのガイドラインだけなのです。広く一般の方に向けて作成した冊子なのに、なぜ消費者向けではなく事業者向けのガイドラインの方を掲載するのでしょうか? とても不思議なことです。ちなみに消費者向けのチェックリストでチェックするとどうもひっかかってくる賛同業者があるようなのですが、そのためではないかという疑念が湧いてきます。

 ガイドラインの紹介の前に次のような断り書きがあります。「このガイドラインに賛同し、自費出版事業を行なう出版社はNPO法人リタイアメント情報センター・自費出版部会が行なう事業実態調査に協力し、所定の情報開示を行なったうえで、所定の手続きによってNPO法人リタイアメント情報センターにガイドライン賛同事業者(仮)として登録することができる」

 そして、賛同事業者について次のような説明があります(23ページ)。

「現時点で賛同いただいた事業者がすべてガイドラインと同じ内容の営業・契約システムとなっているわけではありません。共同出版問題を契機に、まずガイドラインの趣旨としての消費者保護について積極的に取り組んでいく意志を示していただいたことが第一歩であると考えています」

 要するに、登録している業者というのはあくまでも「賛同」であって「遵守」ではありません。でも、遵守でなければ事業者を登録する意味などどれだけあるのでしょうか? 渡辺氏はかつて文芸社の協力出版を強く批判していました。そして文芸社は今でも「流通出版印税タイプ」として基本的に同じことをやっています。ところが、その文芸社を賛同事業者として認めているのです。これほど矛盾したことはないでしょう。また「賛同事業者(仮)」となっているのですが、「仮」とはどういう意味なのでしょうか。

 そもそもリタイアメント情報センターや尾崎浩一氏は文芸社との癒着疑惑が持たれているわけですが、癒着が事実であるとしたならリタイアメント情報センターに相談を持ちかけることがどういうことなのかは想像に難くありません。賛同事業者のトラブルを隠蔽してしまうことも可能でしょう。このNPO法人が自らガイドラインをつくって賛同業者登録を取り仕切り、トラブルの相談まで受け付けるというシステムは、非常に不透明です。

 リタイアメント情報センターがガイドラインをつくってから1年以上が経ちますが、賛同事業者の数はほとんど増えていません。文芸社と日本文学館が加わってから、新規登録があったでしょうか? 渡辺氏はその理由を今一度考えてみたほうがよいと私は思います。

 この冊子を見た方は、ここに紹介されている出版社は安心だと思うことでしょう。でも、文芸社や日本文学館と関わりを持ち、怒っている著者の方が何人もいます。そのような方たちが見たなら欺瞞に満ちた冊子に見えることでしょう。

 渡辺氏は被害をなくすためにガイドラインをつくり、冊子を発行したはずです。しかし、その冊子によって反社会的なことをしている業者に著者を誘導したなら責任も問われることになるでしょう。そうならないことを願いたいものです。

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