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2008年12月19日 (金)

自費出版の原点を大切に

 「本が涙でできている16の理由」(木部克彦著、彩流社)という本を読み、あらためて自費出版の原点を考えさせられました。自費出版に携わる木部さんが、本来の自費出版、つまり著者の注文によって、著者の想いがいっぱい詰まった「宝物」として本をつくることの意味や喜びを、自分自身の手がけた16冊の本づくりを通して語っています。

 この本には、先の記事「企業の利益・企業の倫理」で書いたような利益ばかりを追い求める悪質出版社や、売ることが目的の商業出版の世界とはまったく異なる自費出版の喜びが描かれています。著者の想いが詰め込まれている原稿を、編集者が寄り添って助言し二人三脚で心のこもった本に仕上げていく。「売ってどうこう・・・」などということとは無縁の出版なのです。

 思えば、こんな出版こそ本来の自費出版でした。「著者が自分で捌けるだけの部数を、本という印刷物にする」ことが自費出版の原点ともいえるでしょう。自分の書いたものを活字にし、本の形にして残すことに喜びや意味を見出すことが本来の自費出版でした。

 そもそも自費出版とは、商業出版では採算のとれない著作物や専門書などを出版する方法でした。商業ベースに乗らないと判断される本は、自費出版として出版せざるを得なかったのです。自分史や句集、歌集、詩集などは、販売しない私家本としてつくるのが当たり前でした。売る場合も、ふつうは著者が手売りをしていました。

 そのような中でMBC21などの自費出版社が、商業出版と同じように取次を通して流通ルートに乗せるサービスを付加させた自費出版をはじめました。もちろん売上金は著者に支払うという流通サービスの契約です。その場合でもアマチュアの方の本を無闇に販売ルートに乗せたわけではありません。商品となりうる原稿を選び、徹底的に編集をおこなってレベルを高めることが前提であり、あくまでも自分史などの私的な著作物は私家本が基本です。

 ところが、昨今はどうでしょう? 販売を謳った共同出版や自費出版が巷に溢れています。出版業界は自転車操業でプロの作家の本でさえそう簡単に売れないご時世に、アマチュアの方の書いた原稿をそのまま本にしたところでほとんど売れないのです。文芸社の血液型の本などは、ごく稀な例でしょう。

 今では書店流通、ネット書店、電子出版等を掲げ、販売を謳って著者の気を引こうとする共同出版社や自費出版社が溢れてしまいました。拡大する出版不況のなかで、大手の出版社も自費出版部門に力を入れるようになってきましたが、自費出版の原点を見失っているとしか思えない会社もあります。

 アマチュアの本の販売が困難であることを知りながら、出版社はなぜこれほどまで販売にこだわるのでしょうか? そこから見えるのは「著者とともに心のこもった本をつくる」ことより、利益の追求です。だからトラブルも生じるのです。共同出版のようなおかしな商法が広まり、それに追随する出版社が増えたことによって「自費出版」の原点が見えなくなり、業界の感覚が狂ってしまったとしか思えません。  木部さんも指摘していますが、一部の悪質な出版社がトラブルを多発させたことが引き金となって、自費出版が「お金を騙しとられること」だと思われてしまったら、とても残念なことです。

 木部さんも序文でこんな風に書いています。

 「大切なのは、なんのために本を出版するのかという目的意識をきちんと持つことでしょう。『生涯の宝物』を作るのか、販売が目的か。『販売』目的なら、内容が商品価値を持つかどうかを冷静に吟味しなくてはなりません。販売戦略も立てなくてはなりません。どんな商品だって同じことです」

 本当にそうだと思います。

*この記事へのコメント 「com081219.doc」をダウンロード 

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