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2008年12月 8日 (月)

企業の利益・企業の倫理

 「柴田晴廣氏の疑惑に迫る」の補足です。

 柴田晴廣氏は、私の主張している共同出版等の水増し請求について、企業が利益を追求する中で認められるものであると考えているようです。そこで、出版社の利益について考えてみましょう。

 まず、いわゆる制作請負契約(販売委託契約を付加する場合もある)をする自費出版の場合はどうでしょうか。

 この場合、出版社は請負業ですから著者に対する本の制作サービスの契約になります。いわゆるオーダーメイドですね。ですから、出版社のお客さんはあくまでも著者です。こういう業態での出版費用には、実際に制作に要する費用(印刷・製本費、デザイン・編集費、送料など諸経費)のほか、会社の維持管理費や営業費なども加算されています。会社のすべての経費を著者が負担するという計算になるのです。販売サービスが付加されている場合は、著者から手数料をとって取次会社に販売を依頼するということです。

 出版社が費用の内訳を提示し、本の印刷・製本費として60万円が計上されていたとしても、これはふつう原価ではありません。原価に下駄をはかせて60万円としているのです。たとえば一泊1万円の旅館で夕食の料金が4000円となっていてもそれは原価ではありませんね。それと同じです。請負契約では、これを水増し請求とはいいません。会社の利益まで含め「一式○○円」というのが請負(委託)契約、サービスの契約における費用です。この場合は基本的には「○○円で合意した」ということで、費用にクレームをつけることは難しいでしょう。

 この業態で企業が利益を大きくするためにはどうするでしょうか? 利益分を多くして著者に請求することになります。具体的には、下駄をはかせる部分を多くする、編集などのソフト面での質を落とす、印刷方法や紙質などハード面での質を落とす、下請けの印刷会社などと値引き交渉をする、社員の給料を抑えるなどでしょう。

 先の記事で、商業出版や共同出版の場合、出版社は請負業ではなく製造業だと書きました。出版社が販売目的に自社の商品として本をつくり売上金を得るという業態だからです。この場合のお客さんは紛れもなく本を買う人です。

 たとえ出版費用を著者に負担してもらうという条件をつけても、原稿募集広告や出版説明会などの営業費、賞・コンテストの経費、原稿の下読みの経費など、契約とは関係のない経費は著者からではなく本の売上金から捻出しなければならないはずです。制作費だけを著者に負担してもらうのであれば、本の販売や宣伝の費用も会社が負担しなければなりません。

 この業態で利益を追求するためには企業はどうするでしょうか? 本を多く売ること、損をしない定価をつけること、返品や余剰在庫などのリスクを抑えることです。売れる企画を考え、売れ残りを極力少なくするように部数を決め、損をしない値段設定を考えなければなりません。

 そこで売れる見込みのある本を出版することが求められます。話題性がありレベルの高いもののみを採用するということです。編集によってさらにレベルを高めることも求められます。

 出版社はふつう初版がすべて売れて経営的にトントンになるように印刷部数や定価を設定します。本の場合、印刷部数が多いほど一冊あたりの単価を安くすることができます。しかしあまり多く刷って在庫を抱えてしまうと保管や管理だけでもかなりのお金がかかってしまうのです。損失を少なくして利益を多くするには、印刷部数と定価の判断を誤らないことが非常に重要になります。

 上記のように、著者がお金を出す出版といっても、「請負業としての契約」と「製造業に著者が出資する契約」という二つの業態があるのです。そして請負業と製造業では利益を得る相手が違い、利益を最大にする方法論も異なります。文芸社などの共同出版の契約における業態は製造業ですが、柴田氏はそこに請負業の論理を持ち込んで水増し請求を正当化しようとしているのです。

 数年前までは、マスコミなどでも「自費出版」と「共同出版」を使い分けていました。ところが、最近では著者が出版費用を負担するものをすべて「自費出版」と呼ぶのが普通になってしまいました。これはなぜだと思いますか? 私が水増し請求だと主張したら、新風舎や文芸社自身が共同出版とか協力出版という呼称を使わなくなったのです。請負業と製造業を混同させ、柴田氏のような論理を主張することで水増し請求を正当化できるからではないでしょうか。

 さらに、多くの自費出版関係者がその実態から共同出版を自費出版だと主張しました。それを受けてマスコミも「自費出版」でひと括りにしてしまったのでしょう。こうして「自費出版」の名の下に、費用もリスクも負担せず利益だけが得られるという非常識な製造業が広まってしまいました。「請負業の出版」と「製造業の出版」を一緒にしてはいけないのです。

 「柴田晴廣氏の疑惑に迫る」で、私は文芸社が私を芯から怒らせることをしたと書きました。記事のコメントにも書きましたが、私の記事の削除要請です。しかも、その要請内容を許可なく公表しないように求めたのです。私には文芸社の削除要請は言論封じであり恫喝であるとしか思えませんし、許可なく公表を禁ずる行為は恫喝の口封じとしか思えないのです。また、文芸社は「共同出版・自費出版の被疑をなくす会」の質問書を無視しています。私は、この会社の倫理やモラルに大きな疑問を抱かざるを得ません。

 一方で、文芸社は著者とのトラブルゼロを目指すとして「出版契約等締結にかかる倫理綱領」を公表しています。この苦情処理指針では、「著者に不満が残らない解決を目指す」としています。私には文芸社の倫理綱領は、マスコミへのアピールとトラブルを裁判に発展させないようにするための対策ではないかと思えてしかたありません。

 悪質商法の軌道修正を求めているNGOを無視し、批判記事に対しては「法的手段をとる」と脅す一方で、悪質商法を温存し、苦情があれば法的手段を行使される前に解決するというのであれば、この会社の標榜する倫理とはまやかしでしかないでしょう。トラブルを発生させないためには、その元を断たなければならないはずです。

 文芸社と契約した方たちは、倫理綱領を利用して水増し請求や疑問点についてどんどん質問し、明快に答えてもらうべきだと思います。

*この記事へのコメント 「com081208.doc」をダウンロード 

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