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2008年9月10日 (水)

光市事件とは何だったのか?

 世の中、マスコミ報道だけでは見えてこないものがいろいろあります。そのひとつが、光市で起きた少年による母子殺人事件。

 この問題については、ジャーナリストの綿井健陽さんが積極的に取材して報道してきました(綿井健陽さんの視点とジャーナリズムの危機参照)が、「光市事件 弁護団は何を立証したのか」(光市事件弁護団編著、インパクト出版)を読んで、マスコミの無責任さと廃退した裁判所の現実をまたも突きつけられた思いでした。

 安田好弘弁護士が、元の最高裁の弁護人の依頼を受けてはじめて少年に会ったとき、彼は開口一番に「実は強姦するつもりはなかったんだ」といい、次ぎに会ったときに「実は殺すつもりもなかった」といったのです。それまで本人が事件をそのまま認めていると聞いていたのに、全く異なる発言が飛び出てきました。そこで、安田弁護士は最高裁に調べなおしをさせて欲しいといったのです。そのためには少なくとも3ヶ月は必要と判断し、弁護の延期を申し出ました。弁護人として当然の判断でしょう。

 ところが、最高裁は決められた日にちに弁論せよといってきました。しかしそれではとても準備ができません。しかもその日は弁護士会の仕事も入っていて物理的にも無理。ところが最高裁は弁護人から事情聴取することすらせず、理由も不明のまま延期の申請を却下したのです。

 弁護人は弁論の前日に最高裁に欠席届けを出しました。それにも関らず最高裁は弁論を強行したのです。そして、最高裁は弁護人が欠席のまま検察官に弁護人を非難する意見を述べさせ、自らも弁護人を非難した。さらに、次回の弁論日程を一方的に決めて弁護人に出頭命令と在廷命令を出し、これに反すると処罰するとしたのです。

 私は弁護士が裁判を欠席したという報道がなされたとき、その理由がよく理解できませんでした。マスコミの報道は実に一方的であり、被告の少年の弁護団ばかりを非難するかのような論調だったと記憶しています。マスコミは検察側からの情報ばかりを流したのですから、当然ですね。

 こうやって、弁護団を非難する構図が最高裁と検察によってつくられたのです。それをそのままマスコミが報道したことで、弁護団へのバッシングが一気に高まりました。

 その後の弁護団バッシングでは、さすがに「これは変だ!」と思いましたが、このような経緯をきちんと報道したマスコミはあったのでしょうか?  この本では、少年に強姦の故意も殺意もなかったことを弁護団が立証してきた経緯が詳細に説明されています。少年に強姦の故意も殺意もなかったのであれば、傷害致死であり法定刑は有期懲役です。しかも、少年は父親から激しい暴力を受け、精神的にも極度に幼い状態にあったのですから、刑事罰ではなく少年院などの保護処置が必要でした。

 しかし、弁護団の真摯な主張は無視され、本来保護が必要な少年が、検察の捏造と責任を放棄した裁判所によって死刑とされてしまったのです。なんと恐るべきことでしょう。この判例が今後の裁判にも影響を与えていくに違いありません。

 この現実に、驚き戸惑い、そしてこの国の腐りきった司法と悪質な検察に気が遠くなってきます。この国の司法はとんでもない方向に進んでいるとしか思えません。ぜひ多くの人に読んで欲しい一冊です。

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