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2008年8月16日 (土)

虫の大発生をもたらすもの

 「虫に食べられる樹木」の続きです。

 今年はマイマイガが大発生したのですが、被害が出ているところはほとんどが里山のようです。大雪山国立公園の中などは、一本の木の葉がすべて食べつくされてしまうような食害はほとんど見られません。天然林の場合、いろいろな樹種の木が混生しているために食害が集中することが少ないのです。

 里山には広大なカラマツの人工林があります。広葉樹の二次林も多いですね。そのような森林ではマイマイガの餌となる樹木がまとまってあるので、虫が大発生しやすいのです。さらに、生物多様性の豊かな天然林では野鳥などの捕食者や寄生生物などの天敵が多いために、大発生が抑えられる傾向がありますが、多様性に乏しい人工林などでは天敵が少ないことも多いのです。

 畑の害虫もそうですが、単一の植物を広大な面積に植えるというのは害虫の大発生を呼び寄せているともいえます。

 葉を食べる害虫に対し、キクイムシなどのように枯れた木や衰弱した木を食べる虫は、台風などで風倒木が発生するとそれに合わせて大発生します。といっても、これも普通は一時的なもので、自然に収束していくのです。森林での虫の大発生は、生態系の一つの側面に過ぎません。「中村太士氏の『天然林の伐採』の問題点」にも書きましたが、害虫は駆除しなければならないと決め付けるのではなく、もっと広い視野で見るべきでしょう。

 先の記事でも紹介した山口博昭氏は「森林昆虫の生活史」(創文)の中でこんなふうに書いています。

 「このように多くの森にすむ昆虫たちが、森とあい争う、すなわちすみ場である森を破壊するような愚かしいことをすることはもともとなかった。風害後に大発生するキクイムシ類のように、時に一見森の破壊者のように振る舞うことはあっても、それは倒木や風に傷められた衰弱木をいち早く分解し、新しい森林の更新、成立を早めるための自然の営みともみられ、むしろ森林の遷移、発展にとっても好ましい現象ともいえたのである。それがまるで憎しみあった敵同士のようにとめどもなくあい争うようになったその影に、著者は人間の姿を見るのである。森に人の営為が入ったとき、森と虫との壮絶な闘いが、さらには人と虫との血みどろの闘いが繰り広げられるようになる」

 マイマイガが大発生して商店街などでは大騒ぎしているようですが、大発生を助長しているのは人間であることを私たちは認識しなければならないでしょう。害虫が大発生したと騒いで殺虫剤をばら撒くことは、人間の驕りでしかありません。

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