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2008年8月10日 (日)

標津川の蛇行復元問題

 北海道新聞に、6日から三回の連載記事で標津川の蛇行復元事業についての記事が掲載されました。この事業の問題点について書いてみたいと思います。

 この事業は、標津川の下流4キロメートルにわたって現在の堤防の片方を500メートルほど拡幅し、直線化で切り離された三日月湖を本流とつないで蛇行を復元させるというもので、事業費は10年間で50億円だそうです。

 日本の河川管理者が治水の名目のもとに行ってきたのは、河道の直線化やそれに伴うコンクリート護岸化、川底の掘削やダム建設などでした。水害を防ぐためには川を直線化して速く水を海に流さなければならないとして、蛇行をことごとくカットしてきたのです。こうして氾濫原に広がっていた自然は失われていきました。

 ところが川を直線化すると、これまで蛇行しながら時間をかけて流れ下っていた水が一気に河口部に押し寄せ、河口部で水が溢れることになります。川の下流部では、本流の水位が上昇し、支流より水位が高くなって水が支流に逆流し、内水面氾濫が起こりやすくなります。川を直線化して水を速く流すというやり方は河口部の氾濫につながるのであり、誤った方法でした。

 ところで、近年になってしきりに「自然再生」が叫ばれるようになりました。そして直線化した川をもう一度蛇行させようという試みが検討されはじめたのです。本来の川の姿に戻すということ自体は否定すべきことではありません。ならば、直線化を進め周辺の湿原を破壊してきた河川管理者は、まずはそれが誤りであったことを認めて反省し、その地域に適した自然復元のあり方や治水を考えていかなければならないでしょう。

 堤防によって切り離されてしまった三日月湖をまた本流とつなげるためには、堤防を壊さなければなりません。そこで、現在の堤防をさらに外側に移動させるというのが開発局の発想です。そのような開発局の姿勢には、過去の自然破壊を省みず、相変わらず土木工事によって洪水を押さえつけようとする人間の欺瞞が感じられるのです。トータルな河川環境の保全と治水を考えているのではなく、「蛇行化」だけが目的になっているということです。

 この堤防拡幅の費用は事業全体の8~9割を占めるそうです。「自然再生」を名目にした、「工事のための工事」ではないかという批判を生むことになります。

 川というのは本来蛇行して流れていくものです。そして大雨のたびに氾濫して流路を変えるのです。三日月湖もできれば湿地もできるのが自然の姿です。こうした河川周辺の自然をできるだけ保ちながら、洪水が起こったときに被害を生じないようにするにはどうしたらよいかを考えていかねばなりません。

 ヨーロッパでは、無理に洪水を押さえ込むのではなく、堤防から堤外に水を溢れさせるようにしているそうです。川が溢れることを認め、「洪水」が「水害」にならないように工夫するという考え方です。

 日本でも、かつては洪水を受入れたうえで被害を少なくするような工夫をしてきたのです。直線化を否定するのであれば、水を堤防内に押さえ込むというのではなく「洪水をある程度許容する」という考え方が必要でしょう。水を押さえ込む工事にはお金がかかりますが、水が溢れることを認めるような考えにたてば、大規模な工事をしなくてすむのではないでしょうか。

 国は、地域に根付いていた伝統的な利水・治水の知恵を無視し、直線化とダム建設の愚行を続けてきたのです。その反省なしに、形だけの「蛇行化による自然復元」を唱えても、説得力はありません。

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