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2008年8月22日 (金)

溢れる新刊本と悪のサイクル

 出版年間(出版ニュース社)によると、2006年の新刊点数は8万618点で、過去最高とのこと。これを365で割って1日あたりの出版点数を出すと、約220点にもなります。相変わらず、呆れるばかりの点数ではありませんか! 朝日新聞(2006年12月24日付け)によると、昨年1月から10月の書籍の返品率は、金額ベースで37パーセントだそうです。

 出版不況といわれて久しい中で、出版点数の増加だけは止まらず、溢れるように本が生み出され、その多くが書店にもほとんど並ばずに返品されて断裁処分になっているのです。これほどの資源の無駄遣いが行われていても、なぜか実態はなかなか報道されません。

 大型書店の出店によって小規模書店が廃業に追いやられ、倒産する小規模出版社も後を絶ちません。本の売上がそれほど増えない中で、出版点数だけが異様に増加し、自転車操業に陥っている出版業界は、悪のサイクルにはまった化け物のようにさえ感じられます。それに拍車をかけているのが、アマチュアの著者を対象に流通する有料の出版形態を推奨している出版社の存在でしょう。

 昨年の新刊点数は、1位 新風舎2788点(385点)、2位 講談社2013点、3位 文芸社 1468点(327点)、4位 学研1106点、5位 小学館937点とのことです。主として有料でアマチュアの本を出している新風舎と文芸社が1位と3位を占めていることからも、いかに無名の著者の本が氾濫しているかが伺われます。

 ところで、この出版点数は「『出版年鑑』の書籍目録に収録されたもの」とのことですが、新風舎と文芸社の場合は、括弧内の点数が書籍目録に収録された点数とのことです。ということは、この2社の場合は「書籍目録に収録されていない書籍」が非常に多いということになります。

 では、その「書籍目録に収録されていない書籍」というのはどういうことなのでしょうか? Shuppan NEWS blog によると「データセンターに登録時に定価なしの商品(定価が無いものは流通しない)であったり、小部数出版として扱われ、流通分としては販売用のみのデータ登録しかなされていないのでこのような違いが出ているのであろうということです」との説明があります。

 おそらく新風舎や文芸社の場合、小部数の本が非常に多いということでしょう。これらの出版社の場合、出版点数は多くても、一点あたりの部数は他社とは比べ物にならないくらい少ないのです。

 新風舎や文芸社がメインとしている出版形態は、商業出版の契約書をベースにし、著者が費用の一部を負担するというものですから、出版社の顧客は本を買う読者であるべきです。しかし、少ない部数の本を多産している実態からは、販売に値する優れた作品を選んで質の高い本づくりをし、売って利益を得るという姿勢が欠落し、著者から利益を得ていることが見て取れます。

 それにしても、出版ニュース社やメディアは、新風舎や文芸社を「自費出版系」と呼ぶのはなぜでしょうか? 両社の大半の本は、「著者も費用の一部を負担する条件での商業出版形態の契約」をしたもので、普通の自費出版とは区別しています。このような出版形態は、何も新風舎や文芸社などの共同出版社だけではなく、多くの商業出版社が行っているのです。それらの本は「自費出版」ではないのでしょうか? 「商業出版系」と「自費出版系」を、どのような基準で分けているのでしょうか?

 さて、悪のサイクルを断ち切るために、新刊の氾濫を食い止めて返本を減らし、本の寿命を長くしていくことが、今、出版業界に最も求められていることではないでしょうか。そのためには、まず大手の版元が率先して新刊点数を減らすべきでしょう。それと同時に、「ほとんど売れない」ことを承知のうえで、安易に書店販売を謳って著者を募り、アマチュアの本を乱造することで利益を得ている一部の出版社のあり方も問われます。

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