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2008年7月26日 (土)

洞爺丸台風のもたらしたもの

 青函連絡船の洞爺丸などを転覆させ、北海道の森林に壊滅的な被害をもたらしたという洞爺丸台風(1954年の台風15号)は、その後、北海道の森林に大きな影響を与えることになりました。

 「森林復興の奇跡 洞爺丸台風から40年」(よみがえった森林記念事業実行委員会発行、日本林業技術協会北海道事務所制作)という本があります。この本では、洞爺丸台風で受けた風倒被害への取り組みなどを紹介しています。あたかも適切な風倒木処理が行われ、豊かな森林が再生したかのように・・・。

 しかし、中身を読むと驚くべきことが書かれているのです。

 洞爺丸台風による風倒木は、山を覆っていた森林をなぎ倒し景色を一変させるものだったのですが、その風倒木は北海道の年伐採量の約4倍に相当する量だったそうです。そこで、林野庁は風倒木の処理方針をたて、その実行の一部を本庁自らが行うという異例の措置をとったのです。木材価格の混乱を防止するための需給調整措置、虫害発生や山火事発生の防止のための措置などです。このような措置は当然のことのように思えるかもしれませんが、その実態に愕然とさせられました。

 大量の風倒木をどうやって運び出して材として売るか、倒木に発生する害虫の防除をどのようにするのか、ということが課題になったのです。大量の風倒木は林野庁にとっては天から恵まれた財産ともいえるものでしたから、虫害を防ぐとともにその財産を早く運び出すことが至上命令だったといえるでしょう。

 しかし、風で揺すられた風倒木は繊維が切れているために強度などに問題があります。見た目にはわからないのですが、風倒木は建築材には向かない劣化した材なのです。林野庁はこの事実を知っていましたが、それを隠して風倒被害木を売ったのです。

 また、ヤツバキクイムシなどの虫害防止として行ったのは人力およびヘリコプターによる薬剤散布でした。大量の薬剤が空からばら撒かれたのですが、材の中に入り込むキクイムシにはほとんど効果のないものでした。

 カラマツやトドマツなどの単一樹種を植林したところには病害虫が発生し、ヘリから薬剤が散布されました。人工林ではネズミによる食害も発生し、殺鼠剤も散布されました。病害虫や害獣の防除・駆除として天然林に空から大量の薬剤を撒いて環境汚染をしたのです。

 天然林の風倒跡地に針葉樹の苗を植える拡大造林によって、天然林が人工林化していきました。しかし、低地で育てた苗は高標高地の気候に適応できずに枯れたしまったものも多かったそうです。生残っていた稚樹や幼樹によって更新を図ったところの方が、植林したところより成績がよかったといわれています。

 洞爺丸台風以前は、鋸で丸太を伐り出し、馬で運んだり川で流送することが一般的でした。しかし洞爺丸台風を機にチェンソーが普及し、大量の材を運び出すために林道の敷設や大型機械の導入が本格化し、機械化とトラックによる作業が普及したのです。

 大量の風倒木は林野庁にとってはまさに「お金の山」に見えたのでしょう。洞爺丸台風を契機に拡大造林、薬剤散布、林道整備、機械化が進み、国有天然林の破壊に拍車がかかったといえます。そうして天然林から伐る木がなくなりたどり着いた果ては、大赤字の林野財政なのです。

 私たちは、この破壊の歴史を教訓として反省し、かつての原生林を取り戻すような復元を目指さなければならないのではないでしょうか。

 しかし、洞爺丸台風の教訓を生かすどころか、壊滅的といえるようなダメージを与えてしまったのが幌加やタウシュベツの皆伐地なのです(皆伐をめぐる「不都合な真実」参照)。

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