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2008年6月 6日 (金)

天然林皆伐で林野庁・環境省の弁解

 3日から5日にかけて大雪山国立公園の「幌加」と「タウシュベツ」の天然林皆伐現場を歩きまわっていました(この皆伐問題については「国立公園で木を伐る日本の恥」 「無惨! 国立公園の森林」「天然林伐採の凄まじい実態」参照)。というのは、5日に自然保護団体が林野庁と環境省に合同視察を申し入れていたからです。京大名誉教授で国際自然保護連合生態系管理委副委員長の河野昭一氏も同行しました。昨年の秋に続いて2度目の視察です。

 北海道在住の方は、この視察について新聞報道で知った方も多いと思います。ただ、新聞はどうしても紙面が限られてしまいます。そこで、現場の状況と林野庁・環境省の説明、それに対する自然保護団体の見解をお伝えします。

 タウシュベツでは、皆伐の問題とともに作業道の問題があります。昨年この現場にはじめて入って驚いたのが、沢を埋めて作業道が造られていたことです。沢の形状が変えられ、作業道の脇に掘られた水路に水が流れているのです。そして半年後の今回の光景は、さらに驚くべきものでした。

Sagyoudous  作業道はあちこちで水の流れによって大きく抉られ、ズタズタになっていました。昨年の秋には車で入れたところです。もともと沢だったところに作業道をつけたのですから、大雨が降ればたちまち水に洗われしまうのです。また、作業道の修復作業をする際に砂利を路肩に押し出たと思われるところがあります。

Fuuketu  斜面下部には冷風を吹き出している風穴があり、地下には凍土があると推測されます。このあたりには永久凍土が知られているのです。その風穴地も水の流によって抉られてきていて、エゾイソツツジが赤茶色になって枯れていました。崩壊を起こしている斜面もあります。

Karetanaegi  皆伐現場に植えられたトドマツの苗木の大半は頂芽が枯れ、赤茶色になって枯死している株もあります。許可なく採取や損傷ができない指定植物のハクサンシャクナゲが、損傷を受けていました。表土を剥ぎ取られた斜面は今もほぼ裸地状態で、地表面の温度は30度以上にもなり、保水力が低下して樹木の生育には非常に厳しい状況になっています。

 このような状況について自然保護団体が質問してやりとりをしました。林野庁と環境省の説明、自然保護団体の見解は以下のような内容でした。

1.作業道について

【林野庁】

 昭和46年ごろ造林のためにつけた作業道を、その後手入れをしながら使用している。昨年6月に砂利を入れ、一部にパイプを通して修繕した。作業道をつくる際には、水の流れを無理に変えないように配慮していたと考えている。5月20日に日雨量122ミリの豪雨があって抉られたが、雪融けではこのようにはならない。通常のことではない。 作業道の脇に水路を掘削したことについては、水路を確保するために必要であった。沢の形状の変更は、保安林に指定されたあとであれば問題であったと考える。

【環境省】

 作業道は施業上必要。違法行為はないと考えている。重機で土砂を路肩に押しやっている部分は問題がある。 【自然保護団体】 作業道の洗掘は5月20日の豪雨によるものだというが、日雨量100ミリを超える大雨はこの地域では特異的なことではない。沢を埋め、本来の流路を変えて作業道を造ったために大雨によって洗掘される。

 作業道補修は沢の形状変更に当ると考えられ、自然公園法に抵触する可能性がある。 水路の掘削やパイプの埋設は、オショロコマなどに配慮していない。

2.凍土層の破壊について

【林野庁】

 このあたりに永久凍土があることは知っているが、凍土の調査はしていない。

【自然保護団体】

 川の流れを変えたことによって斜面下部が浸食されて凍土層を破壊した可能性がある。生物多様性保全の観点からも、施業に際しては自然についての調査をすべき。

3.皆伐について

【林野庁】

 タウシュベツの皆伐地は、平成16年の18号台風で壊滅的な被害を受けた。風倒木を放置しておくと病害虫の発生、山火事、風倒木の流出による二次災害の恐れがあるために、被害木の搬出処理をした。保安林であり急斜面でもあるので、倒れた木をそのままにしておくのは問題。早期に緑化するためにも伐採して植えるほうがよい。

 ここは直径20センチ程度でほぼ50年生のトドマツが主体の森林だったことから、洞爺丸台風で被害を受けたところと考えられる。稚樹はけっこう残っていて、大きい倒木を搬出したものと思われる。

 苗木の頂芽の枯死は、雪が少なかったことによる寒風害と思われる。このあとは天然更新を想定しているが、どうすべきか調べたい。

 専門家にも現場を見てもらって意見を聞いた。植林に際し、残置した材を縦に並べたが、横のほうがよかったのではないかとの指摘を受けた。

 幌加の皆伐地も18号台風で壊滅的な被害を受けた。植林の密度を低くし、あとは天然更新を期待している。ここはヘリから撮影したビデオはあるが、素人が撮っているので映像は不鮮明で被害状況はよくわからない。現場の写真も出てきたが、場所が特定できない写真である。

【環境省】

 森林の専門家ではないので、施業については判断できない。指定植物の損傷については、工事や施業の場合は必ずしも違法とは思わない。違法行為がなければ指導する立場ではない。

 生物多様性の保全については、林野庁も十分認識しているはず。

【自然保護団体】

 アメリカでは風倒木はそのままにしている。土壌層まで剥いでしまうやり方は生態系の破壊だ。洞爺丸台風で被害を受けたところも自然に回復している。今回も同様の天然更新で回復したはず。皆伐によって再生不能状態にした。害虫が大発生したとしても数年で収束することがわかっている。

 同じところにある伐採を免れた稚樹の頂芽は枯死しておらず、苗木の頂芽の枯死は寒風害ではない。苗木そのものの問題。南斜面の裸地化は復元がきわめて困難。天然更新を期待するといっても、ササが茂ってしまえば更新はできない。

 幌加の皆伐地については、林野庁はヘリからの目測で被害率を算出しているが、その値は実際より小さく、本当に壊滅的な被害だったのか疑問。被害現場の証拠を出さないために、皆伐が適切だったのかどうか検証できない。昨年の説明では「風倒処理前の写真はない」と言っていた。ヘリからのビデオや現場写真があるということははじめて知った。

 沢に土砂が堆積しており、皆伐地から多量の土砂が沢に流れこんでいる。

 おおよそこのようなやりとりがありました。

 林野庁は、あくまでも風倒木処理は必要なことであり、壊滅的な被害があったので皆伐にしたという論調です。自然保護団体の追及で「皆伐が最善であったとはいえないかもしれない」という発言もしましたが、基本的には皆伐を正当化する発言を繰り返しました。そして自然保護団体の指摘に対しては、何ら明確な反論ができなかったのです。

 環境省の見解は、違法行為とは判断できないし、違法でなければ問題にはできないというものです。また自然保護団体に対しては、急斜面の表土を剥いだ皆伐に問題があるとの発言は全くしませんでしたし、不快感もあらわにしませんでした。ところが北海道新聞の取材には「事前に相談してほしかった」と不快感を示したそうです。読売新聞には「望ましくない形だが、風倒木の処理は必要で、施業方法などを林野庁と協議していく」とのコメントをしています。マスコミの取材に対してだけ皆伐に問題があったとの認識を示したのであれば、何とも不可解です。なぜ、自然保護団体にもそう言わなかったのでしょうか?

 林野庁が「最善であったとはいえないかもしれない」と発言したことは確かですが、基本的には非を認めまいと弁解に終始したのであり、そのことこそ問題ではないでしょうか。この国の行政の最も悪いところは、反論もできないのに「非を認めて反省する」という態度を示さないことです。組織のため、保身のために非を認めようとしない行政のあり方を変えていかなければ、進歩はないでしょう。

 蛇足ですが、不思議に思ったことがあります。昨年までは鍵をかけていなかった林道ゲートに鍵がかけられたことでした。森林管理署の説明では5月20日の豪雨で危険になっている箇所があり、一般の人が入り込まないためとのことでしたが、そのような場所は見当たりませんでした。また環境省には以前から同行を申し入れていたにも関らず、用事があるとのことで途中で帰ってしまいました。河野昭一氏ははるばる京都から来ているのです。せっかくの機会なのですから、最後まで付き合ってほしかったですね。

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