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2008年5月 9日 (金)

表現の自由と知る権利は何処へ

 新聞などではあまり報道されなかったようですが、去る4月22日にオリコンがジャーナリストの烏賀陽さんを名誉毀損で訴えていた裁判で、オリコンが勝訴しました。これは、烏賀陽さんが月刊誌「サイゾー」の電話取材に答えた20行ほどのコメントの内容が名誉毀損にあたるとし、記事を書いた者ではなく情報提供者の烏賀陽さんだけを対象に5000万円の損害賠償を求めたものです。

 判決では烏賀陽さんの主張は一切認められず、烏賀陽さんに100万円の支払を命じました。烏賀陽さんはもちろんこの判決を不服として控訴しました。また、烏賀陽さんは、この訴訟は言論を封じこめるための恫喝だとして反訴しましたが、これも棄却されてしまいました。

 この裁判の内容についてはインターネットメディアなどで報じられていますし、烏賀陽さんのホームページでも説明されていますので、詳しく知りたいかたはそちらをお読みいただけたらと思います。

 この判決には理解できないことがいくつもあります。たとえば情報提供者が明らかにされなかったために、烏賀陽さんの証言や取材ノートが信用できないと判断されていることです。ジャーナリストにとっては情報源の秘匿は最優先されなければなりません。たとえ裁判でも、情報提供者を明かすなどということにはなりません。しかも、問題の記事では烏賀陽さんの話したことが正確に伝えられておらず、烏賀陽さんはサイゾーに対して抗議しているのです。判決ではそのようなことも全く考慮されていません。このような判断が確定されてしまえば、大企業や権力者が容易にジャーナリスト個人を提訴して批判封じさせることができるでしょう。

 名誉毀損での損害賠償金額は高額化してきているようです。恫喝ともいえる名誉毀損訴訟によって、日本のジャーナリストは非常に萎縮させられているとしか思えません。提訴が恐くて企業批判などできず、疑惑を知りながら何も書けないという記者やライターは五万といるのではないでしょうか。このような環境では、とても言論の自由があるとは言えませんし、その結果として私達は知る権利も保障されないのです。日本はとんでもない国になってきたという思いがします。

 ところで、ある会社員がホームページで、フランチャイズのラーメン店に対して「カルト集団と関係がある」などと書いたことが名誉毀損にあたるとして起訴された事件がありました。この裁判では、東京地裁が「インターネットの個人利用者に要求される水準の調査をした上で、誤って真実と信じ発信した場合、確実な資料や根拠に基づかなくても名誉毀損に問えない」という新基準を示し、無罪を言い渡しました。

 名誉毀損裁判に怯えるジャーナリストが多い状況のなかで、一般の人が公益目的の発信をする際にも、「十分な調査を尽くして確実な根拠に基づき真実と信じた相当の理由」が求められるのであれば、一般市民によるネットでの社会的な発言さえ萎縮してしまうのではないでしょうか。検察側は控訴していますが、今回の判決は画期的といえると思います。

 私自身も、このブログで批判的なことを書いていますが、もちろん相手の名前を明らかにしている場合も「悪口」として書いているわけではありません。事実に基づき、公共の利害に関わることについて、公益目的に書いているだけです。ブログ全盛の時代こそ、ネット上での「表現の自由」や「知る権利」が保障されなければ、おとなしい日本人はさらに無口になってしまうでしょう。そういう風潮こそ恐ろしいと思います。

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