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2008年5月29日 (木)

的外れのグリーンピース・ジャパン批判

 北欧に行っている間に、調査捕鯨船団が鯨肉を横領したとして環境保護団体のグリーンピース・ジャパンが証拠品を東京地検に提出して告発したとのニュースがありました。その後、グリーンピースの入手した証拠品が窃盗によるものだとして運送会社が窃盗被害を届出たとのこと。この件で、グリーンピース・ジャパンが窃盗をしたとして批判が強まっているようです。

 グリーンピース・ジャパンへの批判で真っ先に感じたのは、的が外れた環境保護団体バッシングともいえる批判です。証拠品を無断で持ち出したことが正当な行為といえるかどうかについてはさまざまな意見があるでしょう。窃盗であり犯罪だとする人もいるでしょうし、窃盗には当らない、あるいは不正を明らかにするためにはやむを得ない行為であり許容範囲である、と捉える人もいるでしょう。

 個人的には無断で鯨肉を持ち出したこと自体は適切な行為とは思いませんが、グリーンピースとしても弁護士に相談して行っていることです。この行為だけに焦点をあてて批判し、グリーンピースの活動自体をも否定するかのような批判がなされていることに大いなる疑問を抱かざるをえません。彼らの告発の目的は、日本の行っている調査捕鯨での不正疑惑に対し法的な行動に出たということです。その手法の正当性と行動の目的はきちんと分けて考えるべきです。

 世界的に鯨の保護が叫ばれている中で、調査という名目で行われている日本の捕鯨に疑問を投げかけ行動している団体が、その疑問や疑惑の解明のためにいろいろな手段を用いるのは当然のことです。自然保護団体も無駄な公共事業で自然破壊を行っている行政に対して抗議したり、講演会などで問題点を指摘したり、反対の署名活動をしたり、裁判に訴えたりとさまざまな活動を行うことで世間に問題点を知らしめ、また成果をあげてきました。

 ところが、今回はグリーンピースによる「証拠品の窃盗」ばかりが問題視され、肝心の調査捕鯨の問題はかき消されてしまっているようです。私は、イラクで拘束された3人への「自己責任」バッシングを連想しました。イラク戦争に反対し、イラクの悲惨な状況を知らせようとした彼らの目的は、彼らの行動を快く思わない人たちによる「自己責任」というバッシングにかき消されてしまったのです。

 とりわけ疑問に思ったのは、多くの読者を持つ池田信夫氏のブログです。「窃盗」に関する意見はともかくとして、池田氏はエコロジストたちが「鯨を殺すことが非人道的」と捉え、「すべての生命を尊ぶことを原則とする」と解釈しているようですが、これは大きな誤解といえます。このような考えのもとに行動しているエコロジストなど皆無でしょう。

 自然保護団体や環境保護団体は決して「生命を尊ぶこと」を原則とはしていません。グリーンピース・ジャパンのホームページを読めばそのことはすぐに分かるはずです。生態系について理解しているからこそ、海の生態系の頂点に立ち繁殖力も旺盛ではない鯨は保護するべきだという考えです。陸上で生態系の頂点に立つ猛禽類の多くが絶滅危惧種に指定され、保護の対象になっているのと同じです。

 また、日本政府の行っている調査捕鯨は、調査という名目での商業捕鯨といえるものだという主張をしているのです。「環境保護団体のエコロジストは、殺生が非人道的だから捕鯨に反対している」などと解釈している人がいるとしたら驚くばかりですし、それをして星川淳氏を「偽善的エコロジスト」と批判するのは的外れというものです。

 動物愛護団体には「殺生は非人道的」というような主張をする方がいるかもしれませんが、エコロジストの考え方とは明らかに異なります。ちなみに、私自身は何かというと「命を大切に」といって昆虫採集までも否定するような発言にはうんざりしています。

 グリーンピース・ジャパンは沖縄のジュゴンの保護活動も行っています。「ジュゴン訴訟」ではアメリカのサンフランシスコ連邦地方裁判所において勝訴判決を勝ち取り、米国防省はジュゴンへの配慮を行う責任が出てきました。日本政府のアセス調査も問われることになります。

 米国にとっても、日本政府にとっても環境保護団体は自分たちには都合の悪い目障りな団体といえるでしょう。日ごろグリーンピースのような行動的な環境保護団体を煙たがっている日本政府などにとっては、グリーンピース・ジャパンの「証拠品の窃盗」は環境団体批判にもってこいの話題といえます。それだけに、的外れな批判が環境保護団体バッシングに利用されてしまうことが懸念されます。

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