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2008年5月27日 (火)

氷河と生物多様性

 北欧の風景を見て一番に感じたことは、かつて大陸氷河に覆われた土地だということです。今回はスウェーデンとフィンランドの南部に行ったのですが、緩やかに起伏した大地が延々と続き、湖が点在しています。おびただしい数の湖沼は、かつてそこを覆っていた分厚い氷河が融けた名残です。

Syasoukara  緩やかに波打つ大地は森(造林地や二次林)と農耕地がモザイク状に延々と広がり、ところどころに湖を湛えています。ヨーテボリからストックホルムまで列車で移動したのですが、こんな光景がどこまでも続いているのです(写真参照)。南部の大地には原生的な自然は皆無といってもいいのではないでしょうか。

 車窓から景色を見ていてとても不思議に思ったのは「川が見当たらない」ということでした。山国で雨の多い日本ではいたるところに川がありますので、川がない風景はとても奇妙に感じられます。おそらく雨が少なく山のないこの地では雨水はすぐに大地に浸透し、余分な水分は点在する湖にゆっくりと注ぎ込まれるのではないでしょうか。だから川ができないのです。

 また、あちこちに岩盤の切り通しが目につきます。つまり基盤が地表に出ているところがとても多いのです。これもかつて氷河で大地が削りとられた名残なのでしょう。

 厚い大陸氷河に覆われた北欧は動植物が一度死滅しているために、生物の多様性に乏しいと聞いていましたが、実際に景観を見て実感したのはまさしくそのことでした。気候的には札幌などとあまり変わらないのに、森林がものすごく単純です。

 北欧は「森と湖の国」といわれますが、その「森」というのは氷河が融けて大地が現れるにしたがって南から徐々に北上したり、人が植えてでき上がった森なのです。針葉樹はヨーロッパアカマツとヨーロッパトウヒ、そして広葉樹の大半はシラカンバ(日本のものとはちょっと違うようです)です。かつてサハリンに行ったときにも森林のシンプルさを実感しましたが、大陸氷河の影響を受けた北欧の森のシンプルさはその比ではありません。さらに雨が少ない気候によって、生育できる植物が限られてしまうのでしょう。

 街中の公園や街路樹もとても樹種が少なく、菩提樹、マロニエ、カエデ、ハルニレ、ライラックなど、どこに行っても同じような樹ばかりです。西洋の女性は樹の名前を良く知っていると聞いたことがありますが、それは日本人より自然に関心が高いからということではなく、樹の種類が少ないので誰でも覚えられるからではないでしょうか。

 日本に帰ってきて本当に実感したのが豊かな森と生物の多様性です。氷河に被われなかった日本では第三紀からの生物たちがそのまま生き続け、雨の多い気候が多種の植物を育み、そこに棲む動物も本当に多様性に富んでいるのです。

 美しい森、美しい四季をもち、すばらしく多様性に富んだ日本の自然をあらためて実感し、そんな豊かな自然をもつところに生まれ育ったことをつくづく幸せに感じてしまいました。

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