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2008年4月10日 (木)

ケショウヤナギの不思議な分布

 ケショウヤナギは、朝鮮半島や中国東北部、日本、サハリン、カムチャッカなどに分布するヤナギで、高木になります。日本では北アルプスの上高地と北海道の十勝地方や日高地方に分布していることが知られていましたが、その後、オホーツク海に注いでいる諸滑川にも分布していることが確認されました。昨日の記事「河原を彩るケショウヤナギ」はその諸滑川のケショウヤナギです。

 ケショウヤナギが生育しているのは礫の多い河川敷です。十勝には十勝川や札内川のように礫の多い河川がいくつもありますから、あちこちでケショウヤナギが見られるのです。

 ところが、礫の多いのにケショウヤナギが分布していない河川もあります。諸滑川の東に湧別川という川があります。この川も礫が多い河川なのですが、ケショウヤナギは分布していません。オホーツク海に注ぐ川でケショウヤナギが見られるのは諸滑川とその周辺だけなのです。北海道では十勝と日高に分布し、それと離れて諸滑川に分布していることになります。

 ヤナギ類は雌雄異株ですが、ケショウヤナギはヤナギでは珍しく風媒花です。近くに雄株と雌株の両方がなければ種子はできません。また、ヤナギの種子は風によって運ばれますし、一般に乾燥に弱くて短命です。ただしケショウヤナギの場合は1ヵ月ほどの寿命があるようです。種子が風によって数十キロほど運ばれることはあるでしょうけれど、落ちたところの条件が悪ければ発芽することはできません。つまり、それほど遠くまで分布を広げられないということです。写真は、裸地に一斉に芽生えたケショウヤナギです。

 諸滑川と湧別川は30キロメートルほど離れています。湧別川にケショウヤナギが分布していないということは、風によって諸滑川から種子が運ばれるには遠すぎるということなのではないでしょうか。

 本州でケショウヤナギといえば、上高地です。数年前上高地に行きましたが、河童橋のたもとには立派な老木がありますし、梓川の河原には若いケショウヤナギ林が茂っていました。私は、本州では上高地にしか分布していないとばかり思っていました。ところが、上高地から松本までタクシーに乗ったときに、新島々の近くの梓川にケショウヤナギがあることに気づきました。

 上高地は盆地上になっていて梓川の河川敷には砂利河原が広がっていますから、ケショウヤナギが生育できます。しかし、大正池のあたりは礫がないので分布できません。また、上高地と新島々の間は峡谷になっていて砂利河原がないのでやはりケショウヤナギは生育する場所がないのです。梓川が平野に出て砂利の河原が出てきたところにケショウヤナギが分布しています。ここのケショウヤナギは、種子が上高地から川の流れによって運ばれてきた可能性があります。

 それでは、なぜ東北地方をとびこして北海道と上高地に隔離分布しているのでしょうか。それこそ植物の分布の不可思議なところですが、簡単に近隣の地域に分布を拡大させることができる植物ではなさそうだということから考えるなら、かつてはもっと広く分布していたが、その後なんらかの原因で分布が縮小してしまったと考えるほうが自然です。

 北海道には氷河期にはカラマツと近縁のグイマツが分布していたといわれていますが、その後絶滅してしまいました。ケショウヤナギも、かつては日本に広く分布していたものが、今は上高地周辺と北海道の一部の地域にしか生残っていないのかも知れません。

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