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2008年2月 7日 (木)

消えゆくエゾマツの森

 最近、元帯広営林署長の書いたとても興味深いエッセイを読みました。大雪山国立公園の然別湖一帯の森林についての随想です。

 北海道の針葉樹といえは、トドマツ・エゾマツ・アカエゾマツです。かつて然別湖一帯は老齢のエゾマツがうっそうと生い茂り、生木から枯立木までサルオガセがびっしりとついていたそうです。

 大雪山一帯の森林は、昭和29年の洞爺丸台風で大きな被害を受けました。大量の風倒木が発生して森林の様子が一変してしまったそうです。その風倒木処理を契機に、山奥まで伐採が入るようになりました。

 然別湖一帯のエゾマツ林も例外ではありませんでした。洞爺丸台風の被害木は北日本製紙(現在の王子製紙)に販売されて運び出され、さらに地元にチップ工場ができると、チップの原料とするために倒木だけではなく枯れた立木までことごとく森から運びだしてしまったそうです。

 その後の森林がどうなったかといえば、暗く茂っていたエゾマツがすっかり衰退し、トドマツの優占する森林へ様変わりしてしまったというのです。

 トドマツやアカエゾマツは地面に落ちた種子が発芽して生長できるのですが、エゾマツの場合は種子が地面に直に落ちると菌類などに侵されてうまく育つことができません。エゾマツの苗が育つには倒木が必要なのです。母樹となる老齢木を伐り、苗床となる倒木を運び出したために、エゾマツの苗は育つことができなくなったのです。

 洞爺丸台風から半世紀を経て木々も生長し成熟した森林になりつつありますが、サルオガセに覆われた湿度の高いエゾマツの森から、トドマツの優占する乾いた森へと林相が大きく変わってしまったのです。かつての森を知る人にとっては、たとえ木々が茂ってきたといっても決して「昔の森」に戻ったとはいえないのです。

 もちろん、このようなことは然別湖一帯に限ったことではなく、大雪山国立公園一帯の森林も同じです。

 その昔、造材に従事していた人々は、夏にはおびただしいカ・ヌカカ・ブユなどの襲来に悩まされたそうですが、今はそのような吸血性の昆虫も激減しました。森林がすっかり乾燥化してしまったのです。

 林相の変化とサルオガセの激減は、とりもなおさず森林の樹種構成が変わり乾燥化して生態系が大きく変わってしまったことを意味します。

 そのような変化は、湿った森林を好むさまざまな生物を激減させました。クモでいうならキタグニオニグモやキンカタハリオニグモ、ヤマキレアミグモの減少です。ほかにも多くの昆虫や植物が姿を消していったことでしょう。

 また、好んでエゾマツで採餌するといわれるミユビゲラにとっても大きな影響を与えたことでしょう。ミユビゲラはすでに「幻の鳥」となってしまいました。

 かつての原生林を取り戻すには、倒木を残さなければならないのです。風倒木処理の名目で皆伐するなどというのは論外です。

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