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2007年11月14日 (水)

出版権の設定とは?

 私は、これまで商業出版の契約とは出版権(複製と頒布の権利)の設定契約で、自費出版は制作請負契約・販売委託契約だと説明してきました。しかし、自費出版でも出版社(出版サービス会社)に出版権を設定することがあります。では、出版権の設定とは何でしょうか?

 ミッキーマウスやキティちゃんなどのキャラクターを利用した商品を勝手につくって売ることはできませんが、それはキャラクターに著作権があるからです。それらのデザインを使用したければ、著作権者に著作権使用料を払わなければなりません。この契約は事業者の商品をつくることを前提とした財産権の取引契約であり、著作権者の商品をつくるサービスの契約ではありません。

 本を出版する場合も同様に、作家の著作物を勝手に印刷して販売することはできませんから、作家の持っている複製権と頒布権を出版社が使わせてもらうことになります。また、他社から同じ本を出版されないためにも一時的に出版権を独占するのです。それが商業出版における出版契約です。出版社は著作権使用料として著者に印税(一般的には定価の10パーセント程度)を支払います。

 出版社が本を出版するというのは、著者の本をつくって売ってくれるというサービスのように感じられるところがありますが、キャラクターの例と同様に、契約上は出版社の事業を前提とした財産権の取引契約であり、作家に対するサービスの契約ではないのです。

 ところで出版の世界には、自費出版があります。キャラクターの例でいえば、キャラクターの著作権者自身がそのキャラクターを使用した商品をつくって売るということです。この場合は、著作権者自身が事業者ですから、商品の制作を請負う事業者と著作権の取引契約をする必要はありません。

 商業出版が出版社の事業であるのに対し、自費出版は、著者の事業という位置づけになります。著者に諸権利のある本を請負契約でつくってもらう、つまり制作サービスの契約をするのが自費出版です。自費出版の場合は商業ベースに乗らないアマチュアの本が大半ですから、従来は制作するだけが普通でした。売りたい場合は著者が自分で販売するので、出版社に出版権を設定することにはなりません。

 しかし、自費出版であっても、書店で販売して多くの人に読んでもらいたいという本もあります。そこで、自費出版本を商業出版のように書店で販売するサービスを行う会社が出てきました。この場合は、著者が自費出版社に販売を委託することになります。

 本を書店に流通させるには、ふつう、取次という問屋を通すことになります。ただし、出版社が取次と取引するためには口座を持っているか、口座を持っている会社に依頼する必要があります。ですから、どこの自費出版社でも書店に流通してもらえるというわけではありません。

 さて、取次を通じて書店に本を流通させるためには、注文販売と委託販売の二つの方法があります。注文販売は、書店から注文によって本を取り寄せるシステムで、原則として書店の買い切りです。書店が注文しない限り、棚には並びません。

 一方、委託販売というのは新刊が発行されたときに取次から全国の書店に配本してもらうというシステムです。商業出版の大半はこの方法をとっています。この場合、何冊の本を配本するか、どこの書店に届けるかということは取次の判断になります。発行部数の少ない本は、ごく一部の書店にしか配本されません。また実際に棚に並べるかどうかも書店の判断であり、売れないと思うような本はすぐに返本されてしまいます。一日に200点以上もの本が出版されているのですから、内容面でも装丁でも、商業出版レベルの本づくりをしなければ取次も書店も相手にしてくれず、委託販売に向かないのです。

 そこで、委託販売を請負っている自費出版業者は、質の高い本づくりをする必要があります。大半がアマチュアの原稿ですから、編集で大きく手を加えることもありますし、装丁にもこだわります。そうやって自費出版社が大きく関った本を販売する場合は、著者が勝手に増刷したり、他の出版社から販売されないように、出版社に出版権を設定することがあります。

 しかし、これはあくまでも著者の事業を前提とした販売サービスの契約における出版権の設定ですから、出版社の事業を前提とした商業出版の出版権設定契約とは性質が異なります。

 事業者はあくまでも著者ですから、本の所有権は著者にあり、売上金は著者に支払われます。ただし、取次と書店のマージンのほかに、返品手数料や自費出版社のマージンなどを差し引かれることになりますから、著者に支払われる売上金は概ね定価の50パーセント以下と考えたほうがよいでしょう。

 ちなみに、新風舎や文芸社の場合は、大半の本で委託販売方式をとっていないようです。新風舎の場合は、大半は注文販売だけです。新風舎の裁判では、そのような書店流通の説明が不適切であったことを問題にしています。

 文芸社の場合は、書店の棚を借りて1ヶ月間陳列し、売れ残った本を文芸社が買い取るというシステムをとっていますから、本の内容や質を問わずに提携書店に並べることができます。ただし、ジャンル別の棚に置かれるわけではありません。書店にとっては、お客さんが買わなくても全部売れることになりますので、メリットがあるといえます。ただし、その買取費用は著者の負担金に含まれている可能性が高いといえます。

 「共同出版・自費出版の被害をなくす会」は新風舎と文芸社に公開質問書を送付し、新風舎からのみ回答がきています。この回答は、新風舎の共同出版(出版実現プログラム)は出版社の事業であるが、著者へのサービスでもあるという理解しがたい説明でした(新風舎の回答に対する見解参照)。

 新風舎の事業を前提とした出版権の設定契約であり、売上金も新風舎に入るのに、どうしてそれが著者へのサービスなのでしょうか? 「自費出版の販売サービス」というのであれば、制作請負・販売委託契約にしなければならないはずです。

 こうした自費出版と商業出版を混同させるやり方は、新風舎に限ったことではありません。共同出版・自費出版問題を考えるとき、この矛盾をきちんと理解することが重要です。

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