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2007年11月11日 (日)

赤木さんの言いたかったことは?(1)

 私はどちらかというと「あまのじゃく」なのかも知れませんが、話題になっているような本はあまり読みません。でも、例の「論座」に「『丸山眞男』をひっぱたきたい-31歳、フリーター。希望は、戦争。」を書いて反響を呼んだ、赤木智弘さんの「若者を見殺しにする国」(双風舎)は、さっそく購入しました。

 赤木さんの本を読みたいと思った理由のひとつは、我が娘も赤木さんとほとんど変わらない境遇に置かれているということ。もうひとつは、赤木さんの「希望は戦争」の真意はどの程度なのか、彼の意図するところは伝わったのか・・・ということ。

 実際に本を読んでみると、前段の第三章、つまりの「論座」に掲載された「丸山眞男をひっぱたきたい」を書くまでの説明は、こまかいところでは考え方の相違はあっても、さほど違和感も抵抗感もなく読み通すことができました。一度フリーターになってしまうと、その悪循環から抜け出すのは並大抵のことではないこと、ホームレスになった若者たちが生死にかかわるような状況にさらされていること、それが本人のせいではないこと、そしてそうしたフリーターたちに誰も手を差し伸べてくれないという主張はよく理解できます。彼は非常に鋭く社会を分析しています。

 で、やはり立ち止まってしまうのは、「丸山眞男をひっぱたきたい」の中で、その貧困を引き起こしている不平等な社会を変える手段として「希望は戦争」へと導いている部分です。前半で訴えてきた苦境の解決策のひとつとして、戦争による社会の流動化があるという主張です。

 この展開は、それまでの訴えや分析と比してあまりにも唐突で飛躍した感があるのです。「戦争は悲惨だ」「死にたくない」といいながら、貧困問題が平和的に解決できないなら「国民全員が苦しみつづける平等」を選択するということに。今の体制をまるごと壊してしまわなければ社会は変わらないという主張がわからないわけではありません。でも、ここで「希望は戦争」と言い切ってしまうべきだったのか。

 そして、最後に赤木さんは「『平和を守ろう』という人たちにとっての『九条をどうするのか』という議論が、平和を達成するための方法論でしかないように、私にとっての『希望は戦争』、すなわち戦争という希望も、『平和』との闘争のための道具にすぎません」と明かしています。さらに「『希望は戦争』で私は、戦争という道具によって『現状の平和』を打ち壊し、新しい秩序や平等な平和を達成できるかもしれないという希望を書きあらわしました。その希望は、現状の平和が、私にとっては平和でもなんでもないという現実があってこそ、生まれた希望です」と続けるのです。

 「希望は戦争」が、単に切実さを訴えるためのロジックであるなら、そのロジックは適切だったのかとの疑問が生まれます。

 赤木さんの書き方は、ロジックというより、本気で戦争を支持し扇動しているように読めてしまいます。だからこそ、彼に反論を寄せた左派の知識人たちは、ここに敏感に反応したのでしょう。それはある意味で当然のことのように思えます。彼が声高に「希望は戦争」といえばいうほど、定職につけないことを自分のせいにしてしまっている多くのフリーターが、「希望は戦争」を真に受けて、右傾化に拍車をかけることになるのではという懸念が先に立ってしまうのです。

 赤木さんも、平和的に問題を解決することを望んでいます。でも、左派の人たちは弱者の立場だといって「平等」と叫んでいても、具体的には何もしてくれないと批判します。さらに、貧しいものがいなくなるような再配分が、平和なままで守られる、その方法論を見つけだすのは学者先生の仕事だといいます。

 で、ちょっとがっくりしたのは、吉本隆明さんの意見についての彼の対応です。引用すると、

 「あのような不平・不満の持ち方で止まっていると、逆に、自分の待遇が良くなったらそれで終わりになって、人のことなどどうでもよくなる。自分が良くなったらそれでいいじゃねぇかって、必ずそうなるんですよ。その典型がスターリンです(笑い)。」という吉本氏の意見に対し、

 「まぁ、そうでしょうね。それは私も自覚しています。 雑誌『月間オルタ』(アジア太平洋資料センター)の二〇〇七年五月号の企画で、私が雨宮処凛と対談したときにも、そういう話になりました。たしかに、自分の立場がよくなったら、私はこれまでの左派的な考え方に戻ってしまうかもしれません」

 この発言は、正直といえば正直でしょう。でも、切羽詰った「自分のこと」であるからこそ窮状を訴え不平・不満をいうが、ひとたび自分の窮状が解決しそれが他人のこととなったら、また左派的な考えに戻るかもしれないというのであれば、左派や知識人の応答に対してまことしやかに反論したところで説得力はなく、この本の後半の主張はどれだけ意味があるのだろうかと考えてしまいます。(つづく)

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