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2007年10月 1日 (月)

「共同出版」でなければいいのか?

 「出版」は、その契約形態から基本的には商業出版と自費出版の二つに分けられます。すでに何度も書いていることですが、両者を整理してみました。

商業出版

 販売を目的として、文書や図画などを書籍や雑誌として複製・発行すること。その事業を行う企業が出版社。書籍の場合、一般的には出版社と著者が出版権の取引という事業者同士の契約をする。つまり出版社が一定期間出版権を独占する見返りに、著者に印税(著作権使用料)を支払う(印税なしの場合もある)。出版社のお客は本を買う読者。採算がとれるほどの売上が見込めずリスクが大きいと判断される場合は、著者にある程度の本の買い取りや費用の一部負担の条件をつける場合がある。いわゆる共同出版の契約の多くは、これに該当。出版社は出版費用の一部を負担してもらう見返りに一割程度の本を著者に贈呈するのが一般的。

自費出版

 著者が自分に所有権や著作権がある本を、制作サービス会社に注文してつくってもらう制作請負契約。著者がすべての費用・リスクを負担するのが前提で、制作サービス会社のお客は著者。この場合の費用は、利益込みの報酬。販売サービス(販売委託契約)を行っている会社もあるが、販売は基本的には付加サービス。流通に必要なISBNコードと定価をつけ、書店で扱えるようにするだけの場合も多い。ただし、商業出版と同様にレベルの高い本づくりを行い、取次を通して新刊委託販売を行い、販売に力を入れている会社もある。

 要するに、商業出版では「本を売ることが目的で、出版社のお客は読者」であるのに対し、自費出版は「本をつくることが目的で、制作会社のお客は著者。販売する場合、読者は著者のお客」、言い換えれば著者が主体の出版です。両社はまったく異なる業態なのですね。ところが、この契約の違いがわからずに、共同出版の契約を自費出版(制作請負・販売委託契約)だと勘違いしてしまう人がいます。いえいえ、共同出版社が著者を錯誤させているともいえるでしょう。アマチュアの著者がそんな錯誤に陥ってしまうと、共同出版社の思う壺になってしまいます。

 長引く出版不況、大手出版社に有利な取次の条件などで、小・零細出版社や地方出版社は苦しい経営を強いられています。商業出版だけでは経営が成り立たたないところが大半でしょう。このために、小さな出版社の多くは、著者との共同出資による商業出版を行ったり、自費出版も手がけたりしているのです。著者にとっても、自費出版より共同出資による商業出版の方が魅力的です。いわゆる共同出版の考え方は、商業出版から派生したといえるでしょう。でも出版社の商品をつくる契約をするのなら、著者の負担金額はあくまでも実際に要する出版費用以下とし、出版社は本を売って利益を得るべきです。そこは「越えてはいけない一線」なのだと思います。

 その一線を越えていると考えられるのが、問題とされている共同出版です。実際の出版費用以上の料金を著者に請求しているなら、出版社は著者をお客にしてしまうことになります。すると、出版社は何らリスクを負わずにタダで自社の商品を手に入れたうえ、著者から利益を得、さらに本の売上金も得ることができるのです。初版の印税分は、著者の負担金に上乗せしておけばいいのです。一割程度の本を著者に献本するといっても、売る気がない(売れない)なら在庫減らしになって好都合です。出版後、著者に有料の広告を勧め、それで利益を得ることもあります。もし本がよく売れて増刷する場合も、増刷費用は初版の売上金で賄えますから出版社は実質負担なし。出版社に都合のよいことずくめなのです。新聞や雑誌で契約者(出資者)を募り、こんな虫がいいことをやっている企業って、ほかにあるでしょうか?

 これでは、事業者同士の取引としてはとても不公正な取引ですよね。だからこそ出版社は「協力出版」とか「共同出版」などと称して「共同出資」であると説明し、請負契約をする自費出版とは区別しているのでしょう。

 ところが、著者に請求している費用が不透明なために、共同出資ではなく著者から利益を得ていると指摘されるようになりました。「共同」というのが都合悪くなったせいか、最近ではあまり協力出版とか共同出版という呼称を使わない出版社もあります。さらに、はじめから自費出版と称して同様のことをしている出版社もあるようですが、これも不公正な取引ということに変わりはありません。「共同出版」といわなければいいという問題ではありません。

 出版権の設定契約をして出版社の商品をつくるのであれば、あくまでも売れる見込みのある作品を選んで売れる本づくりをし、「共同出資」を実行し、売って利益を上げるべきなのです。はじめから売上が見込めないような、すなわち売り物にならない作品であれば、そもそも「販売」を謳って勧誘することが不適切です。そのような作品には制作請負契約(自費出版)を勧めるべきでしょう。著者がどうしても販売したいのであれば、自分で売るべきなのです。  著者にとってわかりにくい商業出版と自費出版の契約の違いについて、著者はきちんと理解する必要があります。また出版のプロである出版社こそ、著者に丁寧に説明する責任があるのですが、そこを誤魔化している共同出版社が多いのではないでしょうか。

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