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2007年9月14日 (金)

危ない「危ない!共同出版」

 8月下旬に尾崎浩一氏の「危ない!共同出版」(彩図社)という本が出版されました。サブタイトルは「夢を食い物にする錯覚商法」です。このタイトルを見たら、誰もが複数の出版社が行っている夢を食い物にした「共同出版」という出版形態の危険性を指摘している本だと思うのではないでしょうか。ところがどっこい、中身は新風舎と倒産した碧天舎のことだけを取り上げた新風舎批判の本です。「夢を食い物にした錯覚商法」を行っているのは、新風舎だけではないはずですが・・・。

 私が非常に驚いたのは、86ページの以下の部分です。少し長くなりますが引用します。

 「香川さんは、新風舎を自費出版社だとは考えていなかった。共同出版を自費出版のバリエーションだとも思っていなかった。共同出版というのは、著者も制作費を負担するが、新風舎はそこから利益を出すのではなく、本を売った売り上げで利益を出すと考えていたのである。だが、事実は、共同出版というのはあくまでも自費出版の一形態である。新風舎は、共同出版が自費出版ではなく、書籍の売り上げから利益を得て成り立っているなどとはひとつも言っていない。だが、自費出版だとも言っていない。しかし、複数の人が共同出版を自費出版だと思っていなかったというのは、単なる説明不足ではなく、そのように思い込まされていたと考えるべきだろう」

 前回の記事にも書いたように、香川さんの理解は正しいのです。新風舎の契約書は商業出版の契約書と同じ出版権の取引契約なのですから、著者が自費出版だと思わないのは当然です。ところがなぜか尾崎氏は著者の正しい理解を誤解だと決め付けています。そして「新風舎は、書籍の売り上げから利益を得て成り立っているなどとはひとつも言っていない」から、著者から利益を得ていても正当だと主張しているかのようです。

 また、「新風舎の企画書や契約書のどこにも『共同出資』という言葉はなかった」から、「共同出資ではない」としています(110ページ)。しかし、新風舎は新聞広告で「著者の負担は制作費」であると明記していたのです。それ以外の費用は新風舎が持つということも、松崎社長がみずから発言し、新聞記事になっています。それが「共同出資」を意味することくらい、小学生でもわかることでしょう。共同出資なら、出版社は本の売り上げで利益を得なくてはならず、著者から利益を得るのがおかしいことも理解できるはずです。

 さらに、相も変わらずの「消費者契約」だという主張。新風舎の契約も文芸社の契約も消費者契約ではなく、事業者同士の契約であることは明らかです。実態が自費出版なのだから、契約書も消費者契約だなどという主張はあまりにもムチャクチャでこじつけです。消費者契約ではないのですから、クレジットでも事業者用を利用するのは当然です。逆に消費者用を使用したら、著者に請負・委託契約だと錯誤させることになります。

 この本では、新風舎の問題として賞ビジネス、有名人の広告塔利用、褒めて契約を誘う手法、クレジット問題、金額を下げていく勧誘、営業マニュアルの問題、不透明な審査、杜撰な編集、不透明な費用などのことを取り上げていますが、これらの多くは文芸社にも当てはまることです。

 文芸社が新風舎と異なるのは、「諸作者保護制度により著者の負担金や印税が保障される」「HPで在庫の管理状況を明らかにしている」「契約書に刊行日が明記されている」「棚借りによって一定期間書店に並べ、一部の書店名を公表している」「売上還元タイプを設けている」などといったことです。しかし、基本的なシステムに違いがあるとは思えません。

 で、最後まで読み進むと、リスクの少ない出版社選びのために7つのチェック項目が掲げられています。それを要約すると以下のようになります。

1.前受け金が保全されているかどうか 2.在庫の保管状況が明らかにされているか 3.契約書に納期が明記されているか 4.クレジット契約は業者用か消費者用か 5.直接の分割払いでは最終納期は本が完成してからか 6.書店に並べるとしている場合、書店名と期間を明らかにしているか 7.所有権は誰にあるか

 これでは、文芸社はほとんど問題がないといっているように聞こえるではありませんか? まるで文芸社を擁護しているかのようで、意図を感じてしまいます。

 この本で参考になったのは、元社員へのインタビューくらいです。結局のところ、契約書に「共同出資」と書いていないことを理由に費用問題をはぐらかし、また事業者同士の契約を無理やり消費者契約だとこじつけているのです。私には、それによって共同出版商法の本質的な問題点をはぐらかしているとしか感じられません。

 こんなお粗末な論理で新風舎だけが問題だというのであれば、読者を錯誤させる「危険な本」といえるのではないでしょうか。

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