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2007年9月27日 (木)

なぜ騙されるのか?

 東京に行った際に、自費出版業界の方たちとお話しをする機会がありました。共同出版についてかねてから疑問を呈してきたのは、何といっても自費出版業界の方たちでしょう。同業者ですから声高に批判はできないまでも、著者を錯誤させて高額な費用を請求している共同出版のやり方に大きな疑問を持ち、ジャーナリストの取材に応じてきたのも彼らです。

 共同出版と称しながらアマチュアの著者をお客さんにしているなら、自分たち自費出版業者と同じではないのか? それなのに、なぜ本の所有権が著者ではなく出版社にあるのか? そもそも、著者はなぜ共同出版社の甘い勧誘につられて高額な費用を出してしまうのか? なぜ情報収集しないで契約するのか? なぜ商業出版社の賞を目指さないのか? 自費出版業者の方たちは、そんな風に受け止めているのです。

 私は、自費出版業界の方たちとお話しをして、業界の人たちと著者は、手品師と観客の関係に似ていると思いました。手品の種がわからない観客は、不思議なマジックに魅了されてしまいます。だからこそお金を払ってでも手品を見るのです。ところが、その手品のからくりを知っている手品師仲間は観客と同じ視点で手品に感動することはできません。

 出版業界の方たちは出版のことについて精通していますし、共同出版社の舞台裏が見えているので、そのような視点から共同出版というものを見て批判します。だから前述したような疑問が生じるのです。

 では、著者の方はどうでしょうか。まず、大半の人は出版についての知識がありません。本の編集や校正とはどういうことをするのか。流通のしくみはどうなっているのか。印刷や製本の原価はいくらくらいなのか。年間にどれくらいの本が出版され、どれくらい売れているのか・・・。それどころか自分が署名捺印した「出版権の設定」の契約が、請負・委託契約だと誤解している人すら多いのではないでしょうか。そして、たとえそれらを知っていても悪質な出版社か否かを見抜くのは難しいのです。

 朝日新聞や読売新聞は新風舎を持ち上げるような紹介記事を書いています。大手新聞社は共同出版社の大きな広告を何年にもわたって掲載しつづけています。広告掲載にあたっては、新聞社もチェックをしているはずですから、悪質な出版社の広告など掲載するはずがないと思うのがふつうです。悪質な商法であったら、とっくに社会問題になっているはずだと考えるのです。それに出版社というのはいみじくもメディアの一員なのですから、騙すようなことをするとは思わないのです。

 さらに、共同出版社の情報というのは公募ガイドや新聞広告、出版社のホームページなど、出版社側からの一方的なものが多いのです。もちろんそこにはメリットしか書かれていません。インターネット上でも、ニュースサイトで批判記事が掲載されはじめたのは、私の2005年秋のJANJANの連載からではないでしょうか。その私ですら、自費出版業界の方からの情報や若干の報道などがあったからこそ記事を書けたのです。新風舎のことがインターネット上で具体的に報じられ、騒がれはじめたのは比較的最近です。インターネットを利用していない方は、共同出版社の裏舞台はほとんどわからないのです。

 「審査する」としながら、実際にはマニュアルがあり、大半の応募者の原稿を褒めちぎって共同出版に勧誘するとか、提携書店に棚を借りて売れ残った本を買い取っているとか、編集や校正が杜撰であるとか、出版してから有料の広告掲載の勧誘があるとか、そういう実態は著者にはまったく見えません。手品に魅了される観客のように。

 アマチュアの場合、商業出版ではまず門前払いです。そこで、共同出版社に当たるのですが、「費用を分担」と説明されて、著者をお客にしているなどと思うでしょうか? 褒められて「世に問う価値がある」などと持ち上げられたら、自分の作品は「自費出版より有利な共同出版に選ばれた」と思うのは当然です。販売のためにプロが上質の本をつくるなら、制作費が高くても理解できるのです。

 著者にとっては、費用を分担するという共同出版は、自費出版よりはるかに魅力的です。ですから、いちど共同出版に気をとられると、共同出版社にしか見積をとりません。「同じ穴の狢」であることに気がつかないのです。そして、「おかしい」と気づいたときは、すでに本の制作にとりかかっていてどうにもなりません。出版してしまえば、少しでも多く売りたいと思うのが著者の心情です。だから多くの著者は不満があっても口を塞いでしまう・・・。騙されたとは認めたくないですしね。

 共同出版社から本を出してしまう弁護士だっています。インターネット上では「著者にも責任がある」などという意見をときどき見かけますが、共同出版社の内実が見えず、マスコミが広告を流す中で、著者にも問題があるなどと安易に非難することができるでしょうか? 非難すべきは騙す方であり、そのような実態を知らせようとせず、提灯記事や広告を掲載しているマスコミです。

 最近は新風舎のことがいろいろ話題になっていますが、共同出版で怒っている著者は新風舎を訴えた4人だけではないはずです。ジャーナリストたちはどうして騙され怒っている著者の声をあまり聞かないんでしょうか? 不思議ですよねえ? 火がついた新風舎なら「みんなで叩けば恐くない」のか? なんだか新風舎以外を批判するのが恐くて意図的に避けているような気が・・・。ジャーナリズムはどこへ行ってしまったんでしょう。

 そういえば、最近は新風舎の原稿募集の新聞広告は掲載されていないようです。「公募ガイド」からも新風舎の広告は消えて、文芸社のデカデカとした広告ばかりが目立ちます。世のジャーナリストさんはこの現象をどう捉えているんでしょうか?

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