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2007年7月28日 (土)

依頼・委託の欺瞞

 私は、これまで自費出版は「制作請負契約」であり、それを販売する場合は「販売委託契約」を交わすと説明してきました。そして、共同出版(現在では文芸社は流通出版、新風舎は出版実現プログラムと称しているようですが、ここでは共同出版とします)はそのどちらでもなく、出版権設定の契約であると指摘してきました。

 ここで、請負契約と委託契約について考えてみましょう。

 民法で定められている請負契約とは、仕事を完成させることを約束し、仕事の結果に対して報酬をもらう契約です。一方、業務委託契約とは、特定の業務の処理を行うことを約束する契約です。

 自費出版で本をつくる場合、出版社が「著者の本の制作」を完成させる約束をし、その報酬として著者が代金を支払うのですから、本の制作請負契約になります。また、自費出版で制作した本を出版社に販売してもらう場合、出版社は「著者の本の販売」という業務の処理を引き受けるのですから、委託契約になります。

 共同出版の場合、出版社に所有権のある本(商品)をつくることを前提に、著者から出版社へ出版権を移行する契約です。出版社が一定期間、出版権という財産権を独占する見返りに、著者に印税を支払い、印刷部数の一割程度を献本するという取引です。その際のひとつの条件として、著者が出版費用の一部を負担するのです。出版社の本(商品)をつくって販売し利益を得るのが前提の契約ですから、制作請負契約でも販売委託契約でもありません。

 ところが、新風舎の契約書では、「甲(著者)は乙(出版社)に所定の代金を支払い、標記の著作物(以下本著作物)の出版を乙に依頼する」となっています。文芸社の最近の契約書では、著者の負担する費用を「出版委託金」と称しています。委託契約ではないのに、依頼とか委託という表現をつかうことで、多くの著者は「委託契約」だと錯誤してしまうのではないでしょうか? 新風舎を提訴した4人の方たちもそのように錯誤しているようです。「依頼」とか「委託金」などというのは錯誤を誘発する不適切な表現であり、おかしなことです。  

 文芸社の以前の契約書では、著者の負担する費用は「協力負担金」となっていましたが、その後「出版費用」となり最近では「出版委託金」です。以前の方が正しい表現なのに、なぜ不適切な表現に変えたのでしょうか? さらに、以前は協力出版や共同出版と称していましたが、最近では自費出版と称しているようです。基本的な契約の形態は変わっていないのに、なぜ、名前を変える必要があったのでしょうか?

 文芸社や新風舎の契約は、請負契約でも委託契約でもなく、出版社の本(商品)をつくることを前提とした契約です。著者に献本をすることからも、出版社に所有権のある本をつくることは明白です。出版社が自分で自社の本をつくるにあたり、著者がその費用の一部を負担して協力するのですから、その「出版費用」は「利益を含む報酬」ということにはなりません。出版社が実際に支出する金額であるべきです。

 ところが、出版社は実費をはるかに上回る費用を請求していると考えられるのです。とてもおかしなことですね。でも、著者が「請負契約」とか「委託契約」だと錯誤し、見積費用を「報酬」と解釈すると、「その金額で納得して契約したのだから費用がおかしいとは言えない」ということになるのです。出版社にとっては、高額な請求金額を正当化できるので、とても都合がよいことになります。

 私には、著者が委託契約だと錯誤することを意図して、「出版を依頼」とか「出版委託金」という表現を使用し、また請負契約だと錯誤することを意図して「自費出版」と称しているとしか思えないのですが・・・。

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