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2007年5月

2007年5月31日 (木)

春の女神よ、永遠に!

Dscn1912  先日、道北のある山に登りました。この日の朝はあちこちで氷点下を記録したほど冷え込み、早朝は毛糸の帽子が欲しいほどの寒さです。登山口ではようやくチシマザクラが花を開きはじめ、5月下旬だというのに北国では遅い遅い春です。

 登山道の脇にはニリンソウ、エゾエンゴサク、エゾイチゲ、ミヤマスミレ、ヒメイチゲ、ナニワズなどが可憐な花をつけています。そしてそれらに混じって点々とオクエゾサイシンがあるのに気がつきました。これなら「春の女神」がいてもよさそうです。

 半分ほど登ったころでしょうか。ようやく女神様が姿を現しました。そう、「春の女神」とはアゲハチョウの仲間のヒメギフチョウのことです。早春に開花する春植物で吸蜜し、オクエゾサイシンに卵を産み付けるこのチョウは、春のこの時期にだけ姿をみせるのです。このチョウの分布は、食草のオクエゾサイシンがあり、かつ雪の多い地方に限られているようですが、道北には産地が多いようです。

 やがて気温が上昇するにつれ、次から次へと女神様が活発に飛び始めました。あちらにも、こちらにも、山頂から麓まで・・・ 汗ばむほど暖かくなった帰り道では、どれだけの女神様に出会ったことでしょうか。林床をゆるやかに飛んでは花の蜜を吸うこの優雅なチョウは、やはり春の女神と呼ぶのがぴったりです。

 子供のころ、図鑑を眺めてはこのトラフ模様をもった小さなアゲハチョウに出会いたいと思ったものでしたが、東京に住んでいた私は、限られた時期にしか姿を見せない女神様を見に行くこともなく年月が過ぎていきました。図鑑で見ると派手なトラフ模様ですが、自然の中を舞う姿を見ていると、不思議なことに違和感がないのです。チョウの翅の斑紋を見るたびに、自然の造形というのは実に巧みにできていると感心してしまいます。

 ところが、この美しいチョウの幼虫は黒い毛虫。そして夏から翌年の春までの長い期間を蛹で過ごします。厚い雪が蛹を寒さから守ってくれるのですが、温暖化が進んで積雪が少なくなってしまったら、果たして生きていけるのでしょうか?

 里山に多く生息しているというギフチョウやヒメギフチョウは、薪炭林が利用されなくなってきた昨今、生息地の環境悪化による減少が懸念されています。でも、この道北の山では人手の加わった里山だけではなく、自然林にもヒメギフチョウが脈々と生き続けています。そんな本来の生息地が永遠に保たれてほしいと願うばかりです。

2007年5月30日 (水)

webはクモの芸術作品

Dscn1891  webと聞いたらインターネットのことしか頭に浮かばない人がいるかもしれませんが、webを辞書で引くと「クモの巣」とか「クモの巣状のもの」と書かれています。インターネット上のサイトのことをwebsiteとかwebpageなどといいますが、もともとはクモの網からきているんですよね。クモの網のような通信網ということなのでしょう。写真の網は小さなサラグモの仲間の網なのですが、これを見れば、「なるほど」と思いませんか? そうそう、ブログもweblogの略です。

 一般の方はクモの網のことを「クモの巣」と呼びますが、クモの研究者の多くは「巣」とはいわずに「網」と呼びます。なぜなら、クモの網は餌を捕るための罠であり、子育てをする巣とは役割が違うからなのです。ハチの巣とか小鳥の巣、獣の巣穴といったら、子育てをするところですよね。たしかに網に卵のう(卵の塊を糸でくるんだもの)をつけているクモもいますが、網の目的は餌の捕獲なので、ふつうは巣とは区別しています。

 さて、多くの人は「クモの網」といったら円い網を思い浮かべるでしょう。野山を歩いていてうっかりクモの網にかかってしまい、クモが頭や服を這いまわって「キャー!」なんていう経験を持っている人もいると思います。山道の空間はクモが網を張るのにちょうど良いのか、よく円い網が張られていますから。でも、そう毛嫌いせずによくクモの網を見てください。あの円い網に朝露がついてキラキラと光っている光景は、なんとも素晴らしい自然の芸術品ではありませんか! そして、あの小さなクモがどうしてこんなに精巧な網を作れるのだろうかと、いつも見とれてしまうのです。

 ところで、クモの網は円網だけではなくいろいろな形があります。扇形の網やお皿のような形の網、シート状の網、ドーム型の網などなど・・・ そんなクモの芸術作品を標本にしている女性がいます。クモの網の世界を覗いてみたい方は、船曳和代さんのホームページ をご覧ください。クモの網って、不思議だと思いませんか?  そして網の世界に興味を持った方は、身の回りのクモの網を探してみませんか?

 遠くに行かなくても、庭木や垣根にもクモは棲んでいます。家の中で網を張っていることも。ちょっと野山に出かければ、いろいろな網に出会えるはずです。でもね、すべてのクモが網を張るわけではないのです。網を張らないで素手で餌を捕まえるクモもたくさんいるのです。やっぱりクモって不思議な動物です。

2007年5月26日 (土)

エゾエンゴサクの花の色

Dscn1865  早春の里山の林床は、フクジュソウやキバナノアマナの黄色、カタクリのピンク、アズマイチゲやニリンソウの白で彩られます。そして北国ではこれにエゾエンゴサクのさわやかなブルーが加わります。

 樹の葉がまだ開かない早春に花をつけ、夏には地上部が枯死してしまう春植物は、生育期間がとても短いためにスプリング・エフェメラル(春のはかない命)とも呼ばれています。

 エゾエンゴサクの花はたいてい青空のようなきれいなブルーをしていますが、よく見るとそのブルーに濃淡があったり、紫がかったりしている花もあります。ほとんど白に近い花もあります。先日は、写真のようなピンク色の花を見つけました。

 多くの野生植物は、種によって花の色が決まっています。エゾエンゴサクのように同じ種でありながらいろいろな色の花を咲かせる植物は少ないのではないでしょうか。そこで、この花の色の秘密について書かれていないかと思い「植物生活史図鑑」(北海道大学図書館刊行会)を開いてみました。

 残念ながら花の色のことについては書かれていませんでしたが、エゾエンゴサクは自家不和合性、つまりほかの株の花粉がつかなければ種子が実らない植物であること、そして主としてマルハナバチが花粉を媒介し、アリが種を運ぶことがわかりました。

 エゾエンゴサクの花の色が遺伝子によって決まっているとしたら、ピンクの株にできた種子から芽生えた子供は、ピンクの花を咲かせるとは限らないのですね。そう、あのメンデルの法則のように。でも、ブルーの中にぽつりと咲いているピンクのエゾエンゴサクの種子がどこかに運ばれ、その子供たちが、いつかまたピンクの花を咲かせることに、かすかな期待を抱いてしまうのです。

2007年5月25日 (金)

緑資源機構談合で思い出した「穴埋め」事件

 昨日、緑資源機構の発注した林道整備をめぐる談合事件で、機構幹部や受注した会社の担当者などが逮捕されました。今日の新聞のトップニュースです。北海道新聞の社説では「不正の温床そのものだ」とのタイトルで、この悪質な談合事件を厳しく批判していますが、誰もが頷くことでしょう。

 さて、鬼蜘蛛おばさんが「緑資源」と聞いて真っ先に思い出すのは、2003年の「ナキウサギ生息地の穴埋め事件」です。ナキウサギは岩が積み重なったところ(岩塊地)に生息しています。でも、岩塊地はどこにでもあるわけではありませんから、ナキウサギの生息地はとても限られているのです。ナキウサギは高山にしか棲んでいないと思っている方が多いかも知れませんが、そんなことはありません。標高条件より岩塊地の存在に左右されるのです。

 北海道の大規模林道の平取・えりも線予定地には、ナキウサギの生息地が点在しています。この地域でナキウサギの生息調査をしていた「ナキウサギふぁんくらぶ」は、2003年の6月に大規模林道の予定ルート付近でナキウサギの貯食(ナキウサギが植物を噛み切って岩の隙間に引き入れたもの)を見つけました。

 その年の9月22日のことです。緑資源機構の北海道地方建設部の最高責任者が、突然、ナキウサギふぁんくらぶの代表を訪ねてきたのです。要件は、「ふぁんくらぶが見つけたナキウサギの生息地を具体的に教えて欲しい」とのことでした。ふぁんくらぶ代表は彼の懇願に負けて、最後には生息地を示した地図を渡しました。

 その後、10月12日にふぁんくらぶや十勝自然保護協会のメンバーがその場所に出かけてみると、なんだか様子がおかしいのです。よくよく見ると、岩の隙間に新しい土が詰められ、空隙がなくなっていました。そう、ナキウサギの生息地が埋められたのです! ある岩のところでは、フッキソウが不自然な状態で移植されていました。これはどう見ても自然現象ではなく人為的です。

 この林道の入口には施錠されたゲートがあり、一般の人はほとんど入ってきません。森林施業の関係者が岩穴を埋めるとは思えません。そして、ここがナキウサギ生息地であることを知っているのは、ふぁんくらぶや自然保護団体のメンバー数人と緑資源機構だけなんです。

 この事件は10月16日付けの読売新聞でも報道されました。そしてナキウサギふぁんくらぶは、この穴埋めに緑資源機構が関与した疑いが高いと考え、林野庁と緑資源機構に対して抗議するとともに真相を解明するように求めたのです。ところが、緑資源機構の理事長からふぁんくらぶに「厳重抗議書」なる文書が配達証明郵便で送られてきました。「内部監査を行ったが、職員は全員関与していない」と稚拙な内部調査をもとに、謝罪と抗議文撤回を求めてきたのです。

 そんな折に、ナキウサギふぁんくらぶのHPの掲示板に、「小市民」と名乗る人物が「環境保全に興味がある・・・」などとしながら、ふぁんくらぶが穴埋めの証拠をどのくらい掴んでいるかを探るかのような書き込みをはじめたのです。さらに、ふぁんくらぶを批判する書き込みも。このときは、ついつい鬼蜘蛛おばさんも反撃の書き込みをしてしまいました。およそ10日間続いた掲示板論争も、反撃によって小市民氏が撤退を余儀なくされたのですが、匿名掲示板を利用した攻撃は、情報操作によるNGO潰しを狙ったのか・・・ とにかく卑劣ですよね! その後、掲示板は引越しをしてしまったので、その部分が今は見られないのがちょっと残念です。

 さて、誰が穴を埋めたのかはもちろん謎のままです。でも、林道建設予定地のすぐ近くにナキウサギが生息していたら都合が悪いのは誰なのかと問えば、誰もが「緑資源機構!」と答えるでしょうね。

2007年5月24日 (木)

春を告げるキタコブシの謎

Dscn1867  北国で春を告げる樹といえば、キタコブシです。まだ冬枯れのモノトーンの山肌にコブシの白い花が浮き上がるように咲くと、「ああ、今年もコブシの季節がきた」と、なんだかしみじみとした気持ちになります。画家の坂本直行さんがキタコブシの花を好んで描いたのも、この清楚な花に同じような思いを感じていたからなのでしょうか。

 そして、キタコブシに混じってエゾヤマザクラのピンクが彩りを添えると、「ああ、春だな」と、安心感のようなものを覚えるのですから、花の存在というのは不思議です。花にしてみれば、単に受粉をしてくれる虫たちを呼び寄せるために美しくなっているだけなのでしょうけれど・・・。

 今年は、例年よりキタコブシの花が見事に咲いたように思います。コブシは年によってとてもたくさん花をつける年と、あまり花をつけない年があるのです。これはコブシに限ったことではありません。アオダモやミズナラ、ヤマブドウもそうですね。何年か前にアオダモがたくさん花を咲かせたときには、山肌が点々とうす緑になったのに驚いたものです。

 そしていつも不思議に思うのは、植物たちはどうして一斉にたくさん花を咲かせることができるのかということです。広い範囲に点々と生えているのですから、「今年はみんなで一斉にたくさん花を咲かせようね!」なんて相談ができるわけではありません。でも、相談しているのではないか、と思ってしまうほど、それは見事に一斉に開花するのです。

 もうずいぶん前からこんな疑問を感じているのですが、ううん・・・やっぱり謎です。

2007年5月23日 (水)

緑資源機構とは何ぞや?

Dscn1574  4月頃から「緑資源機構」という独立行政法人の、林道整備をめぐる入札談合のことが話題になっています。公正取引委員会が強制捜査を行い、東京地検が立件に向けて動きだしたというのですから、かなり悪質な談合のようです。この談合をめぐるニュースはしばしば報道されてきましたが、なぜか緑資源機構の行っている「林道整備事業」がどんな事業かということはほとんど報道されていないようです。不思議ですねえ!

 この林道整備事業というのは、実は1973年から「森林開発公団」が建設を進めてきた「大規模林道」という道路なのです。つまり今から30年以上も前の高度経済成長時代につくられた林道計画が、今でもそのまま続けられているんですね。当時、全国に7つの「大規模林業圏」が指定されたのですが、その基幹となる林道というわけです。

 ところが、近年は国有林も道有林も木材生産より森林の公益的機能を重視するというように、方向が変わってきました。それなのになぜ新たな林道が必要なのでしょうか? 林業をとりまく状況が変わってきているのに、林道建設だけは多額の税金を投入して延々と続けられているのです。かつての森林開発公団は緑資源公団となり、さらに緑資源機構へと名前を変えてきました。林道の名称も今は「緑資源幹線道路」とされています。やっていることは変わらないのに、「森林開発」から「緑資源」に変えるなんて、なんだか誤魔化されている気がしませんか?

 林道と聞いて頭に浮かぶのは、幅の狭い砂利道ですよね。ところが、この大規模林道というのは幅が7メートルもある2車線の完全舗装の立派な道路なんです! それを全国各地の山奥に建設しているのですが、かなり建設の進んでいるところもあれば、まだまだこれからというところもあります。北海道では、「滝雄・厚和線」「置戸・阿寒線」「平取・えりも線」の3路線で建設が進められているのですが、いずれももろい地質のところなので、完成してもあちこちで土砂崩れが発生して、その修復にまた税金が・・・ という状況なんですよね。

 しかも、北海道の3路線の周辺にはいずれもナキウサギの生息地があります。クマタカなどの希少な猛禽類も生息しています。いろいろな絶滅危惧種の生息地になっているのです。それを写真のようにズタズタに切り裂いているのが大規模林道なんですね。いったい誰が利用するんでしょう? 「緑資源機構」はすっかり有名になりましたが、ほとんどの人がこの自然破壊道路のことは知らないようです。

 緑資源機構の理事長が林野庁長官OBであることは、自然保護団体の間ではよく知られていました。林道事業の調査を受注している団体にも多数の林野庁OBが天下っているのですから、「何かあるのでは・・・」ということは感じていたのです。

 それにしても「ええっ!」と思ったのは、5月12日づけの北海道新聞に掲載された「東京地検が証拠紛失」という記事です。あの東京地検特捜部が、公正取引委員会の押収した証拠人を誤って処分してしまったというのです。厳重に管理されている証拠品がそんなに簡単に紛失するものなのでしょうか? しかも、この紛失が報道されたのは立件の方針を固める少し前のことです。なんだか胡散臭いものを感じてしまうのは考えすぎでしょうか・・・

 大規模林道や緑資源機構のまわりには、とにかく不思議なことがたくさんあるんです。その不思議なことは、これらか少しずつ書いていこうと思います。

2007年5月21日 (月)

シラカンバとダケカンバの秘密

Dscn1858  シラカンバ(シラカバ、白樺)とダケカンバ(ダケカバ、岳樺)といえば、北海道ではとてもポピュラーな樹です。名前だけは誰でも知っていると思いますが、簡単な見分け方を知っていますか?

 シラカンバは葉脈(正確には側脈)が6~8対なのに対して、ダケカンバは7~12対。でも、葉っぱを見なくても遠くから簡単に見分けることができます。幹の枝の付け根の部分にヒゲのような黒い模様があり、枝が黒っぽいのがシラカンバ。幹にヒゲ模様がなくて、枝の先の方まで白いのがダケカンバ。写真の左の樹がシラカンバで、右がダケカンバです。鬼蜘蛛おばさんも、ここまでは知っていました。それではなぜシラカンバにはヒゲがあるのでしょうか? 昨日、この謎を教えていただき、思わず「なるほど!」と納得しました。

 樹は毎年少しずつ生長していきますが、幹が太っていくときに枝の基部を包み込むように生長していきます。このとき、枝の樹皮が押し出されるようにして幹の表面に残されるのです。あのヒゲは枝の樹皮だったんですね。これを専門用語で枝隆(しりゅう)といいます。

 とすると・・・枝隆はシラカンバだけにあるわけではないですよね。それで庭の樹をじっくり見てみました。ありました、ありました! ヤチダモにもイタヤカエデにもオオバボダイジュにも。なぜシラカンバの枝隆があんなに目立つのかといえば、幹が白くて枝が黒っぽいからなんです。他の樹は幹と枝が同じ色をしているので、目立たないだけなんですね。ダケカンバは幹も枝も白っぽいしから、ヒゲが見えないわけです。それにしても、なぜシラカンバの枝は黒いんでしょうね?

 シラカンバやダケカンバの樹皮はところどころ薄く剥がれていますね。よく燃えるので「ガンピ」といって炊きつけに利用したりします。あの薄い皮一枚が一年間でつくられた樹皮なんです。シラカンバは短命の樹で、生長も早いのですが、ダケカンバは長寿でじっくり生長します。そしてダケカンバは老樹になると、あの白くてつるりとして綺麗だった樹皮がひび割れて、まったく違う樹のような樹皮になるのです。そうそう、人間のお肌も歳をとると・・・

 ダケカンバはふつうシラカンバより標高の高いところに生育していて(例外もあります)、北海道では針葉樹林帯の上にダケカンバ帯と呼ばれるダケカンバの純林があるのですが、本州の山には明瞭なダケカンバ帯というのがないんですね。これも鬼蜘蛛おばさんが疑問に思っていることのひとつです。知っている方は、是非教えてください。

 ところで、シラカンバの樹皮が好きなクモやダケカンバの樹皮が好きなクモもいるんですよ。このクモさんたちのお話は、また別の機会にしたいと思います。

2007年5月19日 (土)

「えりもの森裁判」って知ってますか?

Dscn1841  一昨年の秋のことです。ときどき調査で出かけていた日高管内のえりも町の道有林の一部が皆伐されてしまったのです。それまでトドマツなどが茂っていた森が、突然なくなってしまいました。そして、その近くでは間伐のための集材路が造成され、ナキウサギの生息地が破壊されてしまいました。ここは希少な猛禽類も生息している森なのです。

 今どき皆伐?! 私たちはびっくりしてしました。北海道は平成14年から木材生産のための伐採はやめて、森林の公益的機能を重視した森づくりをすると方針転換したからです。こんなふうに皆伐してしまったら森林のもつ公益的機能は損なわれるだけです。どうしてこんな伐り方が「公益的機能重視」になるのでしょうか?

 こんな疑問をもった道民3人が、北海道の監査委員に対して住民監査請求をしました。北海道の条例や生物多様性条約に違反する伐採によって森林の公益的機能が損なわれたので、その損害を賠償するようにと。北海道は、森林の公益的機能を金銭的に評価していて、その価値は年間11兆1300億円と試算していたのです。

 ところが、その住民監査請求は不受理とされてしまいました。「森林の公益的機能は財産として評価できない」という理由です。却下ではなく不受理です! 私たちはもちろん納得できません。住民監査請求が認められない場合、請求人は裁判を起こすことができます。住民訴訟です。そうして一昨年の年末に提訴したのが「えりもの森裁判」です。

 さて、その裁判の原告となっている3人とは、道警の裏金問題の追及で大活躍した札幌の市川守弘弁護士、「ナキウサギふぁんくらぶ」代表の市川利美さん、そして私なのです。そして、弁護団は市川弁護士が中心となり、全国の環境問題に関心のある弁護士さんたちが大勢、ボランティアで参加してくださっています。本当にありがたいですね。

 昨年は、入口論でのやりとりになりました。「住民監査請求は不受理であり提訴できない、森林の公益的機能は財産とはいえない」という北海道に対し、原告は「不受理は不当であり、森林のもつ公益的機能は財産として評価できる」と主張してきました。今年の2月にその入口論での判決が出され、原告の主張が全面的に認められたのです!

 森林というのは、洪水や山崩れを防止したり、二酸化炭素を吸収して酸素を放出したり、野生生物の生息地になるなど、さまざまな公益的機能をもっているのですが、その森林の価値が認められたのです。これは画期的な判決といえると思います。

 そんなわけで、今年からは裁判は「本論」に入っていきます。次回の口頭弁論は以下の日程です。興味のある方は傍聴にいらしてください。

6月15日(金)午後1時15分より 札幌地方裁判所(1階の事務所で法廷の場所を聞いてください)。

2007年5月18日 (金)

絶滅はどうやって起きるのか?

Dscn1825  先週の土曜日は、様似町で開催された「第5回かたくりサミット」に行ってきました。「かたくりサミット」というのは、「かたくりの美しさ、大切さを通して自然環境を考え、人間どうしの交流を促進する」ことを目的として、2003年から開催されているものです。北海道でははじめての開催です。5月初旬から中旬といえば、様似町ではちょうどピンクのカタクリと白いオオバナノエンレイソウの花が咲き競っている季節なのです。

 今日は、このサミットで最も印象に残った「絶滅」についての話題です。

 北海道には各地にカタクリの群生地がありますが、様似町の群落もなかなか見事でした。北海道には小さな群生地はたくさんあります。あちこちに生育しているのだから簡単には絶滅などしないと思ってしまうかもしれません。でも、昔は今よりはるかにたくさんの生育地があったに違いありません。昔はカタクリの根から「片栗粉」を採ったくらいなのですから。だから、今残っている群生地は点々と取り残され細々と生き残っているものなのです。

 このように群生地が開発などによって小さな集団に分断されていくとどうなるのか、ということが問題なのです。カタクリはマルハナバチやヒメギフチョウによって花粉が運ばれ、種子をつけることができます。その種子にはエライオソームとよばれるアリの好物がついていて、アリが種子を運ぶのです。あのちっちゃなアリが運ぶのですから、分布を広げるのにもとても時間がかかるのです。

 ふだんはあまり気がつきませんが、多くの植物は昆虫と密接な関係を持っています。生育地が分散されて小さな集団になってしまうと、花粉を運ぶ昆虫があまり訪れなくなり、群落の遺伝的な多様性が失われてしまうことになります。実が結ばれなければ、子孫を残すことができなくなってしまうのです。

 知らない人は驚くかもしれませんが、林床に生育するカタクリやオオバナノエンレイソウなどは芽生えてから花をつけるまでに数年から十数年もかかるのです! 今、たくさん花が咲いていても、その近くに子孫が育っていなければ10年後には群落がなくなっているかもしれません。「絶滅は 知らないうちに訪れる」なんてことに・・・

 北海道にはかつてはザリガニがたくさん棲んでいました。でも、今は生息地が分断されています。小さな沢に取り残されたザリガニは、他の地域のザリガニと遺伝的な交流ができない状態ですから、環境が悪化すれば絶滅してしまうかもしれません。

 「ここはたくさんいるから大丈夫」なんてのんきなことをいっていたら、何年か後にはいなくなっているということもあり得るのです。生態系というのは、人間が考えている以上にデリケートなのかもしれませんね。これからは、ただ「守る」だけではなく、生息地の拡大を目指さなくてはいけないのかもしれません。

2007年5月17日 (木)

何で鬼蜘蛛なのかって?

 もともとアナログ人間なので、ちょっと前まではHPとかブログなどとは無縁だと思っていたのですが、日々、いろいろなことに対して疑問がつのる一方となり、ブログを始めてみようという気になりました。そこで、おっかなびっくりブログの開設となりました。

 このブログのタイトルに目を止めた方は、なんで「鬼蜘蛛おばさん」なのか?って思われるでしょうね。よく言いますよね「鬼の○○さん」とか「仏の○○さん」とか・・・ 「鬼蜘蛛おばさん」ならすごく恐いおばさんだと思われるでしょうね・・・ ううん、確かに見方によっては恐いかも・・・ まあ、そのあたりは、ご想像におまかせします。

 鬼蜘蛛の由来は、私の好きな動物が蜘蛛だということなんです。たいていの人は「蜘蛛」と聞いただけで嫌な顔をするのではないかと思いますが、私は蜘蛛が大好きなのです。一般の人から見たら「変人」「おたく」のたぐいかもしれません。でも、蜘蛛という動物は本当に面白いんですよ。あのレースのような芸術的な網も魅力的ですが、生活史などもわからないことだらけなのです。

 ちなみに、北海道にはマユミオニグモという蜘蛛も実在しています。とても大きなオニグモなのに、比較的最近になってから新種として記載されたんです。こんなことも未知のことが多い北海道ならではのことでしょうね。南北に長い日本列島の北の方には、まだ未知の蜘蛛もたくさんいるのです。

 というわけで、ときどき蜘蛛の話題を交えながら、鬼蜘蛛おばさんが日頃感じている疑問や考えなどをメインに綴っていこうと思います。

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