2012年2月 2日 (木)

全国で繰り広げられている脱原発訴訟

 これまで日本で行われてきた原発の裁判はことごとく敗訴してきた(一審や二審で勝ったものがあるにはあったが、最終的には敗訴している)。しかし、福島の原発事故によって、原発の安全神話は完全に崩壊した。そして福島の事故を契機に、全国の弁護士らが新たな裁判を次々に起こしているのだが、マスメディアはその闘いをほとんど報道しない。

 いま日本の原発訴訟はどうなっているのかと思っていたら、昨日、原子力資料情報室による解説があった。脱原発弁護団全国連絡会代表の河合弘之弁護士が、全国で起こされている脱原発訴訟について説明をしている。

 以下はこの動画の要旨。

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 今までの原発差し止め裁判ははじめから予断と偏見を持って行われており、原告の主張は取り合ってもらえなかった。しかし、3.11は原発に関する認識を裁判官も変え、偏見で見なくなった。裁判官にもう一度問い直そうと確信し、日本中の弁護士に呼び掛けた。今までも原発の弁護団は頑張ってきたが、情報交換や勉強会がなかった。そこで、団結し、日本全国で裁判しよう呼びかけたところ多くの人が集まった。現在125人くらいの弁護士が正式登録している。

 現在の各原発の訴訟の概要は以下。

:昨年12月に提訴。700名近い原告団。

大間:おととし7月に訴訟を起こしていたが、函館の人たちが熱心にやっている。函館市長も拒否権を主張。函館はすぐに放射能が届く位置にある。

六ヶ所:福島原発を見てもう一度気合いが入ってきた。

東通:今のところ動きがない。ここでの戦いはあまりに大変。

女川:女性の若い弁護士らを中心に弁護団ができつつある。

福島第二:福島の弁護士さんたちが訴訟を起こす動きがある。

東海:東海村村長は反対の立場。弁護団が結成されつつある。近いうち裁判がおきると思う。首都圏に一番近い原発であり、絶対差し止め裁判をしなければならない。

柏崎苅羽:最高裁までいって負けたが、福島を見たらもう一回やり直しするに十分値する。

浜岡:浜岡は、東京の控訴審とは別に地裁2つでも裁判が起こされ闘っている。控訴審では、裁判所は再稼働前に仮処分の判断をするといっている。裁判所の判断がないまま再開をすることはない。仮処分で是非止めたい。静岡で新たな原告団ができ、弁護士90人、原告団も数百人集まった。静岡に住んでいる静岡地裁の裁判長も福島を見て恐怖しただろうということで起こした。また、浜松支部で第三の訴訟が起きている。

志賀:一審で勝って二審で負けて判決が確定しているところだが、独特の戦いをしている。裁判は置いておき、まわりの市町村の首長を説得して安全協定を結ぶ運動をし、安全協定による拒否権または条件付けによって再開を止めようということを弁護士がやっている。

若狭湾:敦賀、美浜、大飯、高浜に再開禁止の仮処分をかけている。安全審査指針は無効だということが福島原発でわかった、だから止めろといって頑張っている。

島根:控訴審。裁判所はあまり熱心ではなかった。福島の現状を踏まえ裁判官も認識を改めて取り組んでいる。

伊方:原発訴訟のトップを切っていたが負けてしまった。最高裁までいった。その判決以降運動が沈滞していたが、弁護士がもう一回やろうと呼び掛け、数百人が集まって裁判が始まった。第一回期日がもうすぐ始まる。

上関:これはまだ埋立の最中。すばらしい自然が残されている海を埋め立てて原発をつくるという滅茶苦茶な計画。埋め立ての工事をめぐって差し止めの裁判が起きている。今までは、裁判官は埋立のあと何につかうかは焦点ではないと言っていた。しかし、やはり原発の問題なので埋め立てて原発を造ること、原発が安全かどうかということもテーマになると踏みこんできており、いい兆候が見られる。祝島の人たちが30年以上、一致団結して闘っている。事故がおきたら祝島の人たちは蒸し焼きになる。上関側の人たちもひどい被害を受ける。

玄海:古くて心配されている原発。海底活断層があるということで問題になっている。知事も原発推進でどうしようもないし、九州電力はヤラセもあった。事故が起きたら北九州がアウトになる。昨日、1700人の原告団で訴訟を起こした。

川内:弁護団ができつつある。今年の4月か5月の訴訟を起こす。

 日本のすべての原発を止めるために頑張っている。原告や賛助会員などになって地元の裁判に参加してほしい。

 正直なことをいうと、徒労感と屈辱感で一杯だったが、3.11でやっぱり自分たちの言っていたことが正しかったと思った。残りの人生を日本中の原発を止め、安心して過ごせる国にするため頑張ろうと思った。他の弁護士も同じ気持ちだと思う。

 裁判所も絶対に変わっていくだろう。御用学者も、これまでいい加減なことを言っていたが、そんなことはもう言えなくなる。レッテルを張られている人たちは、そんなに勝手なことはできない。裁判官に正義感が生まれているのではないか。司法が止めるしかないと考えているのではないかと思う。

 裁判所は、今までは原発事故はきわめて稀有な可能性しかないから差し止めは慎重にすべきだという意見が主流だった。唯一差し止め判決を書いた裁判長は、結局は退官している。いままでは退官を決意しないと原発差し止め判決なんて書けなかったと思う。もんじゅの高裁の裁判官など、読売新聞にぼろくそに書かれる。出世の望みのない者が判決を書いたと、メディアから叩かれる。しかし、もうそんなことはないだろう。原発を止めたら「よくやった」、「えらい」と言われる雰囲気になってきたから、裁判官もそれを感じていると思う。

 浜岡原発の差し止めの一審判決などは電力側に安全の立証責任があると言った。しかし、その立証責任は原子力安全・保安院の設置許可を得たことを主張すれば良く、それでも危険であることを原告側が立証しなさいと言っていた。つまり住民側が全部立証しなければいけない。全部安全指針をクリアしたのに、福島ではあんな事故が起きたことが分かった。これからの裁判は「審査をクリア」した、では通らなくなる。立証責任が電力側に移っていった。

 実際には、「国が許可したから大丈夫だろう」、「それを覆す主張はなかった」で終わっていた。その結果福島の事故が起きた。裁判はやりやすくなった。これからは、地震がおき、事故がおきたとき、判決を書いた裁判官の責任が歴史に残る。

 大間原発は、熊谷あさ子さんと娘さんの小笠原厚子さんが原発敷地内にある自分の土地を売らずに闘ってきた。熊谷さんが土地を売らないため、電源開発は炉心の位置を動かして安全審査を通してしまった。許可が下りて建設がはじまっている。建設敷地内にある「あさこはうす」に通じる道の両側は有刺鉄線で囲まれている。

 あさ子さんは裁判で闘って負けたが、河合弁護士はもういちど差し止め裁判を起こすと法廷で宣言。人格権にもとづいて差し止め裁判しようと言っていたのに、あさ子さんが急死された。これで終わりかと思ったら、娘さんの小笠原さんが同じ気持ちだと言った。それで、函館に行って「お金はいらない、手弁当でやる」といったら、弁護団も原告団もできた。

 大間原発の問題点は、世界ではじめてのフルモックス燃料を使うということ。高速増殖炉ができないのでプルトニウムがどんどん溜まる。だからフルモックスを造らないと矛盾が解決できない。世界で一番大きく、一番危険なフルモックス燃料を使う原発。普通よりずっと多くのプルトニウムが入っていて、事故が起きたら非常に深刻。これを止めなければならない。もうひとつの問題は、大間は工事中で36パーセントくらいできている。新設なのか新設ではないのか評価が分かれる。これを止められるかどうかは新規を認めるかどうかの分かれ目であり、負けられない。非常に重要な闘い。

 日本だけは原発をやってはいけない。大きな地震が発生するところで原発をやっているのは日本だけ。原発は巨大精密機械であり、精密機械は振動と水に弱い。日本の地震発生率は世界平均の130倍。世界の人たちは日本をもっと非難すべきだ。即時全部やめ、とりあえずは化石燃料でやるしかないのでは。二酸化炭素より放射能のほうが怖い。

 これからの裁判は福島原発で何が起きたか、何が原因か。それを究明し、それがクリアできているかどうかが問われる。福島は事故究明が終わっていない。何もわかっていないのに、なぜ再稼働ができるのか。はじめに再開ありきだからだ。放射能に苦しむより少々電気代が上がってもいいではないか。そして自然エネルギーを普及させていく。産業の空洞化など20年前から始まっている。嘘で塗り固め、それでもやろうという人たちとは闘うしかない。

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 全国の原発で裁判が行われている、あるいは始められようと準備が進んでいるのだが、実は3.11のあとで原発訴訟はどうなっているのか、あるいはどこで新しい裁判が始まったのか、この動画を見るまでは私もはっきりとつかんでいなかった。こういう動きをマスコミはほとんど報じないから、一般の人たちも具体的なことはほとんど知らないのだろう。しかし、多くの人に知って関心をもってもらいたいことだ。マスコミはいつまで原子力ムラの一員でいるのだろうか。

2012年1月31日 (火)

もう一度原発が過酷事故を起こしたらこの国は終わる

 昨日の北海道新聞夕刊の「論壇」というコラムに、金子勝氏が「なし崩しの容認避けよ」とのタイトルで原発の再稼働問題について書いていた。

 金子氏は、「新潮45」2月号に掲載された添田孝史氏の「全原発54基総点検」という記事と、「世界」2月号に掲載された原子力資料情報室の「原発再稼働は危険だ」という記事で危険であると指摘された原発を挙げ、再稼働に警告を発している。

 危険な原発とは、耐震性に問題のある原発、マークⅠ型原発、老朽化原発、地震に対して危険性が高い原発、3基以上の原発が集中しているところ、組織に問題のある原発・・・。そうやって挙げていくとほとんどの原発が引っかかってきそうだ。それはそうだろう。

 福島第一原発は東北地方太平洋沖地震でいとも簡単に壊れ、4基もが爆発したのだ。あの地震では東海第二原発だってぎりぎりでメルトダウンが回避された。女川原発だって危なかった。日本の原発がいかに地震や津波に無防備だったのか、安全神話がいかに嘘で塗り固められたものかが巨大地震で一瞬のうちに露わになったのだ。もし東海第二原発がメルトダウンしていたら、日本は終わるところだった。そのことを肝に銘じなければならない。

 原発銀座といわれている若狭湾にも津波の記録がある。しかし、これまで関西電力はまともな津波対策をしてこなかった。なのに、原子力安全・保安院はなぜ大飯原発のストレステストを認めてしまうのか。この国の無責任体質には言葉もない。

若狭湾の大津波(伝承)・・関電は知っていた・・(院長の独り言)

 金子氏は最後に、故高木仁三郎氏の遺著「原発事故はなぜくりかえすのか」(岩波新書)の中の一文を紹介している。以下がそれだ。

 根本の問題をおきざりにした日本の原子力行政は、もっとひどいところにいくのではないか。最悪の事故のようなものが避けられないかもしれない。とんでもない事態が起こっているようで、かけ値なしの恐怖感が私にはあるのです。

 高木仁三郎氏は、危険性を知りながら安全神話を振りまいて54基もの原発を造ってしまった日本は、いつか大事故を起こすと予感していたのだろう。そして、そんな大事故が起きたら日本がどのようになるかも見通していたに違いない。この文章には、核の恐ろしさを知っていながら、その暴走をどうすることもできない研究者の苦悩が滲んでいる。

 高木氏に限らず、これまで原発の危険性を訴えつづけてきた研究者や技術者も同じような恐怖感を抱き続けていたに違いない。しかし、彼らの声は多くの国民に届くことはなかった。否、仮に届いたとして誰が原発を止められただろう。そう思うと、どうしても無力感に襲われてしまう。しかし、だからといって投げやりになったらそれこそ終わりだ。

 3.11から10カ月以上経過した。汚染がひどくない地域の人たちはどうも危機感がない人が大半らしい。そして汚染された地域で暮らさざるを得ない人たちは、半ばあきらめムードだとも聞く。関東地方あたりでは、原発のことは話題にしないようにしている人が多いようだ。まだ原発から放射能が放出され、ニュースでは原発のことを聞かない日はないのに、人々から危機感が薄れていくのが恐ろしい。

 福島第一原発の事故は想像を絶するほどの被害をもたらしている。被ばくし避難を余儀なくされた人たちへの補償はもちろんのこと、農地を汚染した被害はこれから何年も続く。漁業被害も計り知れない。観光地も被害を受けた。今後健康被害が出てきたときはどう補償するつもりなのか。食料品の流通やゴミの焼却、汚染瓦礫の処理によって汚染は広がる一方だ。あれだけ海を汚したのだから海外からも賠償請求されるだろう。原発事故というのは国を破綻させるほど大変なことなのだ。しかし、再稼働させたいという人たちにはその責任が微塵も感じられない。

 日本がまた大きな地震に襲われる可能性が高いとの指摘が地震学者によってなされている。ほぼ間違いなく近い将来に日本はまた大きな地震に襲われるだろう。それも複数回来る恐れがある。今度また福島と同じような大事故が起きたなら、本当に日本は終わるだろう。ストレステストで再稼働にゴーサインを出すような連中だって、そんなことは百も承知のはずだ。それなのに何故、原発を止めようという一言が言えないのだろう。

 未だに原発が必要だと思っている人たちに声を大にして言いたい。「日本を終わらせたいのか!」と。

2012年1月26日 (木)

いよいよマスコミが大地震、大津波への警告を発しはじめた

 今日の北海道新聞朝刊のトップ記事は、「東北北部沖にも震源」とのタイトルで、北海道大学の平川一臣教授の新学説についての紹介だった。

 平川さんは、北海道と東北で津波痕跡調査を行い、過去の3500年間に7回以上の巨大津波があったことを確認した。道東沖を襲った巨大津波は17世紀、3~4世紀、2500年前、3500年前の4回で、前回の発生から400年が経過し、次の発生の切迫度は「大きくも小さくもない」という。

 東北北部沖を襲った巨大津波は12~13世紀、紀元前後、3000年前の3回で、前回の発生から800~900年が経過しており、次の発生の切迫度は「極めて高い」そうだ。

 北海道を襲う巨大津波は道東沖と東北北部沖でそれぞれおよそ千年間隔で起きていることになる。そして、どちらが震源であっても北海道の太平洋岸には大津波がくると予測されるのだ。

 東北北部沖といえば、先の3.11の地震で割れ残っているとされている場所だ。そこで近い将来大きな地震が起きる可能性がある。また、道東沖もいつ地震がくるか分からない。いずれにしても警戒が必要だ。

 「現代ビジネス」も、こんな記事を書いている。

地震予知の第一人者・長尾年恭東海大学教授「首都圏直下型M8」「東海地震M9」はまもなく来るものと覚悟してください

「アウターライズ地震」が列島を襲う 「3.11」まで2カ月を切った 官邸と文科省が隠蔽しつつ密かに恐れる「次」の悪夢

前兆現象がこんなに! M8M9大地震いよいよ本当に来そうで怖い

 これらの記事では東北地方太平洋沖地震で大地震の発生時期が早まったことと、3.11の地震で地盤が割れ残っている青森沖と房総沖の大地震を指摘しているほか、首都圏直下型地震や、3.11の震源域の海溝の外側で起きる「アウターライズ地震」、東海地震への警告を発している。

 太平洋沿岸はいつどこで巨大地震がおきてもおかしくないし、震源域が海であれば巨大津波に襲われると考えられるのだ。土佐湾で20メートル、三重県で15メートル、愛知・静岡で10メートルなどという予測もあるという。東京、大阪、名古屋などといった大都市が水浸しになる可能性がある。

 そして、驚くのが「『アウターライズ地震』が列島を襲う」という記事にある官邸に近い民主党の中堅代議士の話。一部引用しよう。

「3・11由来のアウターライズ地震については、本震から1ヵ月以内にも起こる可能性があるとして、官邸は密かに恐れ警戒していた。本震発生当日に宮城県沖の日本海溝の外側で発生した地震はアウターライズ地震だったとされているが、地震の規模がM7.5と小さく、官邸はこれを、想定される巨大アウターライズ地震の前震と捉えていた。
 地震のエネルギーは発生が延びれば延びるほど蓄積されていくため、本震から3ヵ月、6ヵ月、9ヵ月などの節目の時期を経て、官邸は一段と危機感を募らせています」
 この中堅代議士によれば、その一方で官邸が情報の公開を「ひた隠し」にしてきたのは、予想される被害があまりにも甚大であり、かつ、現状では打つ手がないからだという。要は、情報を公開すれば国民から必要な対策の実施を迫られ、必然的に「打つ手なし」の現状が白日の下に晒されて、大批判と大パニックに見舞われることを、官邸が警戒し思考停止に陥った結果だと言うのである。

 政府は3.11直後にアウターライズ地震を想定していながら、予想される被害があまりに甚大で打つ手がないという理由で、国民に隠し続けていたというのだ。原発事故の情報隠蔽と同じ構図がここにもある。これほどまで国民を馬鹿にした政府もなかなかないのではないか。

 また、以下のような記事もある。危険なのは太平洋側ばかりではない。日本海側の断層がずれたらやはり大きな津波に襲われるのだ。

津波:佐渡北方震源、県が予測 西ノ島・国賀港、M7.85で10.46メートル/島根(毎日新聞)

 東京大学地震研究所では、3.11の地震以降、首都圏での地震活動が活発化してきていることから、南関東のM7程度の地震の発生確率を「今後30年で98%」「今後4年で70%」とする試算を発表した。近い将来に首都圏で大地震がある可能性がかなり高いということだ。

2011年東北地方太平洋沖地震による首都圏の地震活動の変化について

 そして、沖縄を除く日本中の海岸に原発がある。これほど恐ろしいことはない。石橋克彦さんなど一部の地震学者が以前から警告してきた危機が現実のものとなりつつあるのだ。一刻も早く原発を止め、安全の確保に最大限の努力をしなければならないのに、やれストレステストだ、再稼働だなどと言っているのはもはや狂気に等しい。

 北大の森谷武男さんの地震エコーのデータは非公開になってしまった。エコーのデータが収束したという情報は入っていないので、当初の12月から1月という予測より大地震の発生は遅くなっていると思われるが、一人ひとりが迫りくる大地震への警戒と対策の強化に努めるしかない。

 3.11から10カ月余り。迫りくる地震や津波への警戒を呼び掛けるのがあまりにも遅い。

2012年1月25日 (水)

広島の細見谷林道の建設中止が決定

 原発事故はいまだ継続中で、放射性物質の放出量は減るどころか増えたとの報道があった。八ッ場ダムも着工に向けて進んでいる。溜め息が出るようなニュースばかりが続いていたが、先日、広島県の大規模林道が中止になったというニュースがあった。久々の朗報だ。

 緑資源機構の廃止によって林道の事業主体は地方自治体へと移行し、北海道の大規模林道は全面的に中止された。しかし広島県では中止決定がされずに自然保護団体などが反対運動を展開し、住民訴訟も起こされていた。しかし、広島県議会は19日に厳しい財政事情などを理由に事業を中止することを決定した。

廿日市の細見谷林道建設:県、事業中止へ 環境保護団体は歓迎、地元戸惑い 厳しい財政事情で /広島(毎日新聞)

 5つの工区のうち細見谷と「庄原・三和区間」は工事をしておらず、貴重な自然が破壊されることなく中止となったことは歓迎したい。ただし、相変わらず中止の理由は財政難であり、自然破壊という観点はほとんどないようだ。この国の自治体の大半は、生物多様性の保全に消極的だし、判断基準が結局は「お金」というのなら何とも情けない。

 住民訴訟については、今年3月21日に判決が言い渡される予定だ。

細見谷渓畔林訴訟結審(細見谷に大規模林道はいらない)

 判決がどのようなものになるか分からないが、広島県は裁判を意識して判決が出される前に中止決定をしたのではなかろうか。まっとうな判決を期待したい。

 日本はこれから原発事故の補償で財政がひっ迫するのは目に見えている。無駄な公共事業などに税金を注いでいる時代ではないだろう。

2012年1月23日 (月)

再度、菊池誠さんの野呂美加さん批判とEM菌について

 菊池誠さんの野呂美加さん批判については以下の記事にも書いているが、この記事で私が最も言いたかったのは、菊池さんが野呂さんの提唱している放射能対策について何ら具体的理由も示さずに「効果がない」と断言したり、東京で被曝によって鼻血や下痢の症状が出ることはあり得ないと断言していることだ。これはとても科学者として責任ある発言とは思えない。

菊池誠さんの野呂美加さん批判は科学的か? 

 私は菊池氏の「ニセ科学批判」自体を批判するつもりはない。世の中には効能や効果がよく分からない健康食品などがいろいろ出回っており、私も基本的にはそのようなものは信じていない。だから、効能もたいしてないのに高価な商品を売り付ける詐欺的商法に注意喚起することはまっとうだと思う。しかし、菊池氏の放射能や被曝に関わる発言はあまりにいい加減でお粗末としか思えない。

 最近になって、また「野呂美加さんと『チェルノブイリへのかけはし』についてもう少しだけ」という記事を書いているが、相変わらず「野呂さんが言っていることや書いていることは基本的におかしい、まあだいたいはでたらめと言っても過言ではないだろう・・・」と、根拠も示さずおよそ科学者とは思えない書き方をしている。野呂さんを貶めているも同然だ。

 飯山一郎氏が盛んに勧めているのが「米のとぎ汁乳酸菌」である。菊池誠氏やお仲間たちはこれも否定しているのだが、以下のような実験結果がある。

乳酸菌噴霧で玄米の放射能が4分の1に減った(吉岡英介氏のホームページ)

 乳酸菌をスプレーした玄米の放射能はスプレーしていない玄米の4分の1になったというのだ。たった一度の実験結果でしかないが、乳酸菌が放射性物質の低減に役立っている可能性を示唆している。現代の科学では解明されていないからといって、安易に否定すべきではないだろう。

 野呂美加さんが推奨しているEM菌も菊池氏は効果がないと断言する。ツイッターでEM菌の効果について書かれていたものを見た記憶があるが、EM菌についてはどの程度研究や実験が行われており、効果があるという結果が出ているのだろうか? そう思っていたら、以下のtogetterを見つけた。まとめ部分だけではなくコメントも参考になる。

EM菌(有用微生物群)と丸山ワクチンの経緯が似てくる可能性 

 このまとめを作られた@Ani2525さんによると、菌がカリウムと勘違いをしてセシウムを取り込むと、人体ではセシウムやカリウムではなく菌が入ってきたと思い、体内に蓄積されないという理論があるようだ。

 また生命体はストロンチウムもカルシウムと勘違いし、カルシウムが好きな菌がストロンチウムを食べるが、人体ではそれを菌と認識する・・・そういうことのようだ。確かバズビー氏も似たようなことを言っていた。バズビー氏は、ストロンチウムを取り込ませないためにカルシウムの摂取が有効なのだと。

 EM菌にはいろいろなタイプがあり、納豆菌、酵母菌、乳酸菌などが入っているという。ならば、飯山一郎氏の提唱する乳酸菌が効果があるというのも頷けるし、味噌なども同じことが言えるだろう。

 またキノコのことにも触れられていて興味深かった。原発事故の当初から、キノコは放射性物質を取り込みやすいことが報じられていたが、キノコはセシウムを吸着しやすい菌類なのだ。菌類が放射能に対して特別な力を持っているというのではなく、単にカリウムと間違えてセシウムを取り込んだり、カルシウムと間違えてストロンチウムを取り込む・・・。こう考えると、なるほどと思えてくる。

 もちろんこれはまだ仮説であり実験途上のようだし、メカニズムも明確になっていない。また、このような情報があるからといって、私は被曝した方たちにEM菌を飲みなさいとか、乳酸菌を利用しなさいと推奨するつもりはない。その判断は各自でやっていただきたい。

 私が言いたいのは、冒頭に書いたように菊池氏のように何の根拠も示さずに「効果がない」と断言するのは不適切であるということだ。現在の科学で証明できないからといって科学者が「根拠がないデマ」と断言し、菊池誠氏を信じる人たちがそれを拡散させている状況はどうかと思う。@Ani2525さんのtogetterにも菊池誠氏の関係者と思われる方たちが誹謗中傷コメントを入れたようだ(削除されているが)。どうしてそこまでムキになって批判や攻撃をするのだろう。実に大人げない。

【1月25日追記】
「さつき」さんから吉岡さんの実験を引用するのは不適切との指摘があり、該当部分に消し線を入れました。詳しくは
「さつき」さんのコメントをお読みください。

2012年1月22日 (日)

国民投票、福島県民集会…批判の矛先が違うのでは?

 ツイッターでは原発の国民投票や3月11日に福島で開催予定の県民集会について、脱原発支持者の人たちから批判の声が聞かれる。

 批判されている国民投票は以下のサイトのものだ。

みんなで決めよう「原発」国民投票 

 この団体が示している「国民投票の実施手続市民案」に「現在ある原子力発電所について、これをどうすべきだと考えますか?」という設問があり、選択肢が「運転、稼働を認める」と「段階的に閉鎖していき、2022年までにすべて閉鎖する」の二つになっている。これについて「即刻廃止するという選択肢がない」、とか「2022年では遅すぎる」「原発を生き延びさせる提案ではないか」「今は再稼働阻止をすべき」などといった批判的意見が出ている。

 「即刻閉鎖」という選択肢がないことについては、「よくあるQ&A」のページで説明している。これについて批判するのなら、この説明についての反論をすべきだろう。

 私ももちろん原発は一刻でも早く閉鎖してほしいと思っているし、原発がなくても電気は足りると考えているので2022年という設定が適切とは到底思わない。しかし、国民投票で問うべきことは「原発を廃止すべきか存続すべきか」ということでしかないだろう。国民一人一人がどちらを支持するのか、ということだ。とにかく原子力ムラの力は強大であり、現状では「即刻廃止」で脱原発を勝ち取るのは難しい。閉鎖の時期にある程度の幅を持たせるとのはやむを得ないと思う。この春にすべての原発が止まり、それでも問題なくやっていけることが分かれば、2022年にこだわる必要もなくなるのではなかろうか。

 それに、そもそもこれは「市民案」でしかなく、仮に国民投票が実施されることになっても、この案通りになるという訳ではない。また、再稼働阻止は国民投票とは別のこととしてやっていかなければならないだろう。

 事務局長である今井一さんが、以下のサイトで原発国民投票について説明しているが、彼のスタンスは、「大事な問題は基本的に一般の選挙ではなく国民投票で決めるべきだ」ということだ。私もこの考え方に基本的に賛成だ。「国策」を覆して国民の声を反映させるためには国民投票の意味は大きいと思う。

~今井一さんに聞いた~「原発国民投票」は、日本で行えるか? 

 原発に反対の人が、なぜ「大事なことは国民が決めよう」という国民投票を批判するのだろう。批判の矛先が違うのではないかと思えてならない。

 もう一つ、同じように感じたのが以下のイベントだ。

3.11福島県民集会(仮称) (原水禁)

 このイベントを紹介した以下のサイトのコメント欄には、反対の意見が多く書き込まれているし、ツイッターでも批判的意見が聞かれる。

3.11福島県民集会の概要 (さよなら原発1000万人アクション)

 批判的意見の主たるものは、3月11日は大震災による犠牲者を悼む日であり、そのような日に福島でパレードやコンサートをするのは無神経で不適切だというものだ。

 このような気持ちは分からなくはない。確かに3月11日は大地震と大津波で大勢の犠牲者が出た。だから静かに追悼したいという人がいるのは当然のことだ。しかし、その大地震と大津波によって原発が壊れ原発震災が現実化した日でもあり、世界を震撼とさせる大事故、大惨事が起きた日でもある。昨年はとりわけ各月の11日にさまざまな反原発の集会やデモが繰り広げられてきた。1年目のこの日に限ってどうして犠牲者を悼むだけの日にしなければならないのだろう。この日に犠牲者を悲しみ悼むのは当然のことだが、世界最悪の原発事故に対する怒りや脱原発を福島で訴えるのもまた自然だと思う。

 コンサートが相応しくないと意見もあるが、追悼のためのコンサートがあってもいいし、怒りのコンサートがあってもいい。そもそも「福島県民」の集会を謳っており、こうした集会を支持している県民がいるのだ。そのことも尊重すべきではなかろうか。

 東京からのバスツアーに対する批判もあるが、こうした批判には原発を受け入れた福島県民と、電気の消費者である首都圏の人々という対立のような構図まで感じられる。しかし、福島の人たちも、首都圏に住む人たちも東電や政府に騙された被害者ではないか。住んでいるところや立場が違っても、決して被害者と加害者のような関係ではないし、どちらかが悪いというわけでもない。

 無神経なイベントと受け止める人がいる一方で、違う考えの人もいる。自分の感覚と合わないイベントは止めろというのは表現の自由、言論の自由の侵害ではなかろうか。賛同できない人は関わらなければいいだけのことだと思う。静かに犠牲者を悼みたいという人は、そうすればいいのだ。

 原発に反対の人たちが、このようなことで脱原発の活動を批判することにどれだけの意味があるのだろう。批判すべきは東京電力であり、政府であり、原子力ムラの人々だ。脱原発ということでは同じ意見の人たちがいがみ合うのは建設的ではないし、原発推進派の思う壺だ。もっと大局的な見方をしてほしい。

2012年1月20日 (金)

「院長さん」こと小野俊一医師の講演会

 ブログやツイッターで精力的に発言している「院長さん」こと小野俊一医師の講演の動画が、院長さんのブログにアップされた。熊本医師会の学習会での話で3部に分かれている。ちょっと長いが、今回の福島第一原発の事故や被ばくに関する情報が要領よくまとめられている。

フクシマの真実と内部被曝 熊本医師会講演会(2012.1.18) 

 小野医師はアイコンの似顔絵から私より年上の方だとばかり思っていたのだが、掲載している新聞記事の情報によると私よりだいぶ若い方だった。福島第一原発に勤務されていたこともあり、原発についても詳しい。

 今は講演会に足を運ばなくても、インターネットで視聴できることが多くなった。ありがたいことだ。小野医師の動画は音声が小さく聞き取りづらいが、ヘッドホンを使うと聞きやすくなる。時間ができたときなどに視聴していただけたらと思う。

 ところで、被ばくに関して過小評価をしている方の中に、放射性カリウムによる被ばくのことを持ち出す方がいる。「ニセ科学批判」の菊池誠氏もその一人だ。人間はカリウム40や炭素14などの放射性物質を体内に持っており食品からも常に取り込んでいることから、低線量の内部被曝では急性症状が出ないと主張している。

野呂美加さんと放射能対策(kikulog)

 上記の小野医師の2番目の動画に放射性カリウムの話が出てくる。人間が体内に放射性カリウムを持っているのは事実だが、食品としてカリウムを摂取しても体内にあるカリウムと順次入れ替わり、体外に排出されていくのだ。生物は長い生命の歴史の中で、生命に欠かすことのできないカリウムを取り入れると同時に順次排出していくというシステムを構築し、内部被ばくによる危険性を低減するよう進化してきたのだ。しかし人工放射能にはこのような適応をしておらず、臓器や骨などに蓄積されてしまう。原発事故で放出された放射性物質を天然の放射性カリウムと同列に扱うのは正しくない。このことは以下の記事からも理解できる。菊池誠氏の主張はかなり危うい。

低線量被曝の真実(4:放射性カリウムの謎) (アルバイシンの丘)

放射性カリウムとその意味を考える[科学検証]  (六号通り診療所所長のブログ)

 インターネット上には実に様々な情報が飛び交っている。何が真実なのか、何を信じるのかは、ご自身で考えていただきたい。

2012年1月19日 (木)

避難するリスクと留まるリスク

 福島の原発事故で日本中が汚染されてしまった。とはいっても、私の住む北海道の汚染は今のところそれほど酷くはない。そういう場所に住みながら、今回の事故の危機的状況について語ると「安全なところから無責任だ」とか、「危険だと言いながら避難しろと言わないのは無責任」という批判も聞こえてきそうだ。

 しかし、被ばくのリスクは住んでいる場所によって違うし、年齢によっても違う。汚染されていない食べ物や水が手に入りやすいかどうかということによっても異なってくるし、アレルギーや持病をもっているか否かによっても違う。被ばくに対する認識や考え方も人それぞれだ。だから他人が「避難しなさい」などと口出しすることではないと思う。たとえ無責任だといわれても、私は他人に「避難しなさい」などとは言えない。

 また、「不安にさせる」「不安を煽る」と言われても、事実は事実として知らなければならないと思う。もし自分の住む地域がそれなりに汚染されたのなら、私は何よりも事実が知りたいと思う。事実を知らなければ的確な判断ができないし、そこに留まる覚悟をするにも、あるいは避難するにも事実を受け止めなければならないからだ。

 体内に入ってしまった放射性物質の排出に効果があるとされているものがいくつかあるが、そういったものを利用するかどうかも基本的には一人一人が情報収集して決めていくことだ。必ず効果があるとは言えないし、摂取の仕方によっては副作用もあり得る。不安につけこんだ詐欺的商法もあるかも知れない。摂取するリスクとしないリスクを考えて個人個人で判断するしかない。

 しかし私が何より心配なのは、今でも汚染された地域に多くの子どもたちや若い人たちが住み続けていることだ。被ばくによる甲状腺ガンや白血病などは数年経たないと発症しない。さらに、福島はもとより関東地方ですら被ばくが原因ではないかと疑われる鼻血、下痢、咳、あざ、等々の症状が多数報告されているし、突然死の情報もある。もちろんそれらの症状と放射能の因果関係は証明できないが、普通のこととも思えない。少なくとも、これらの症状がチェルノブイリの原発事故のあとに見られた症状と重なるということは知っておくべきだ。

チェルノブイリ症候群(チェルノブイリへのかけはし)

 被ばくしたからといって必ず病気になるというわけではない。しかし病気になってしまえば取り返しがつかないことになりかねない。また被ばくによる免疫力の低下によって亡くなる可能性もある。そういうリスクをどう考えるかなのだ。何よりも被ばくの影響を早期にそして大きく受けるのは子どもたちや胎児だ。だからこそ、あとで後悔しないためにも避難について一人一人がよく考えてほしいと思わずにいられない。

 とはいっても、移住するとなれば仕事や家を手放さなければならない人が大半だろうから、簡単に決断できないこともよく分かる。住宅ローンを抱えている人はなおさらだと思う。本来なら東京電力や国が全面的に補償しなければならないことだが、国は国民の命のことなど考えていない。

 数日前、SPEEDIの情報が事故の直後に米軍に提供されていたことが明らかになった。日本政府は国民より米軍を優先したのだ。しかもチェルノブイリ事故では廃村にされたような汚染地帯に避難した住民を戻そうとしているのがこの国だ。政府の言うことを信じていたら殺されかねない。だから、避難をするかどうかも自分で情報収集し、避難するリスクと避難しないリスクを天秤にかけて決めていくしかない。厳しいかもしれないがそれが現実だと思う。

 以下の「猫山家」は、ご自身で情報収集し、ホットスポットである柏市から静岡への移住を決断された。その経緯が資料とともに詳細に説明されている。

猫山家の例。柏市からの移住。放射能からの退避。

 簡単に移住できるほどの財産がある人ならともかく、一般の人の場合はこれくらい綿密なリスク評価をしなければなかなか決められないことなのだろう。

 猫山氏が最後に書いているように、各家庭にはそれぞれ事情があり移住するかどうかの判断も家庭によって異なる。しかし、汚染された地域に住み判断に迷っている方にとって、この猫山家の記録は大変役立つと思う。猫山氏のようにリスクを書き出して細かく検討することで、家族間の意見の違いも理解しあえるかもしれない。

 いずれにしても、これからの時代はすべて(避難のことに限らず)自分で情報収集し、自分の頭で考え判断していかなければならない。安易に人を信じるのではなく、信じられる情報か否かを一つひとつ自分で見極めなければならないのだ。作家の辺見庸氏は「個」のあり方を強調するが、今ほど個人の意識と意志が問われているときもないだろう。それが原発事故の教訓だと私は思う。

2012年1月17日 (火)

過去の巨大地震と津波に学び防災の準備を!

 テレビはほとんど見ないのだが、一昨日は地震に関する番組があるというので「ザ・スクープスペシャル 過去からの警告」を見た。おおよその内容は以下のようなものだ。

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 宮城県名取市閖上(ゆりあげ)地区は東日本大震災で壊滅的な被害を受け、およそ一割の方が犠牲になった。古文書(日本三大実録)に869年に起きた貞観地震の記録があり、およそ千人が亡くなったとされている。現在の人口比で考えると約2万人にあたり、東日本大震災に匹敵する規模だった。防災対策基準では、閖上地区は沿岸部のわずかな部分しか浸水しないと想定されていた。東京大学地震研究所の古村孝志教授は、貞観地震を知っていたが古文書の記述は信ぴょう性がないと思って無視してしまったという。

 産業技術総合研究所の宍倉正展氏によると、今回の地震の浸水域は貞観地震とほぼ同じだという。南相馬市や浪江長でも貞観地震の痕跡が見つかっており、浸水することが分かっていた。東京電力は福島第一原発では、1938年の塩屋崎地震が最大級だとして津波の想定を5.7メートルと過小評価していた。産業技術相貌研究所の岡村行信氏は経産省の審議会で貞観地震について指摘し警告したが、東電は津波の想定を見直さなかった。3.11の津波は想定外ではない。

 東北学院大の松本秀明教授が仙台市若林区で海岸から2.5キロメートルのところで津波の痕跡の調査をし、2千年前の弥生時代にも津波の痕跡があったことを突き止めた。

 東海・東南海・南海地震でも10メートル以上の津波の可能性がある。大阪は4メートル50センチの津波でほぼ水没する。大阪では1854年に安政南海地震で津波が押し寄せ、2千人の犠牲者が出た。浪速区に安政大津波の石碑がある。

 1361年の正平南海地震では、液状化の痕跡が遺跡から見つかっている。宝永地震のシミュレーションによると、地盤が弱い平野部では長周期振動によって高い建物に被害が生じると言われている。大阪歴史博物館の大澤研一学芸員によると、正平地震のとき津波が到達したと言われているところが安居神社だろうと考えている。当時は安居神社は海岸から約2キロメートルのところにあり、大阪のほとんどは湿地帯だったという。太平記によると、津波がくる前の引き波が1時間もあり、魚を拾い集めようと浜に出てきた人たちが犠牲になった。

 東京大学地震研究所の郡司嘉宣准教授は、南海地震がおきると大阪の環状線の海側半分が被害を受ける可能性があるという。南海トラフは90~150年間隔で大地震が起きている。

 北海道大学の平川一臣教授は気仙沼市大谷海岸の地層調査をし、マグニチュード9クラスの地震が6千年に6回起きた痕跡があることを見つけた。1611年(慶長三陸地震)、869年(貞観地震)のほか2200年前、2500年前、3500年前(特に巨大)、5400年前の6回。岩手県宮古市でも昭和三陸津波、明治三陸津波、1739年の寛政三陸津波、1611年の慶長三陸津波、11世紀から12世紀の津波、869年の貞観津波の痕跡を見つけた。東北では何度も巨大津波があった。

 明応地震(1498年)では東海道の橋本地区が壊滅したことが古文書から推測される。浜名湖は巨大津波に襲われていたと考えられている。

 古文書では鎌倉の大仏殿は津波で倒壊したと書かれている。しかし、鎌倉市のハザードマップでは避難場所になっており、見直しを迫られている。鎌倉には1万人が住んでおり、被害が懸念される。

 14基もの原発が林立する若狭湾では過去に津波による被害記録はないとされ、津波調査がなされず、津波の想定は2.5メートルになっている。しかし、古文書には天正地震(1586年)による津波の記録があった。震源地は養老山脈ではないかと言われている。三方五湖でボーリング調査を行い、電力会社は津波の痕跡は認められないとしたが、平川一臣教授は点状のボーリング調査では不十分であり津波が来なかった証明にはならないと言う。

 地震考古学者の寒川旭博士は、巨大地震が襲った平安時代とよく似ていると指摘し、東北日本と西南日本の巨大地震が同じころに起きるのが現在ではないかと言う。日本三大実録には878年の元慶関東地震と887年の仁和西日本地震が記録されている。貞観地震の前に関東直下型地震、東海・東南海・南海地震が起きていた。関東直下型地震と南海トラフ地震が起きると、関東から関西まで被災する可能性がある。

 富士山では地震活動が活発化している。3月15日の富士山直下の地震で火山活動が活発化した可能性がある。活火山である富士山は必ず噴火する。貞観地震の5年前にも貞観大噴火が起きた。このときの溶岩流で青木ヶ原ができた。地下150メートルまで溶岩で覆われており、このときに出たマグマは14億立方メートルという。江戸時代には宝永大噴火があり、大量の火山灰が降った。富士山の噴火で農業被害などが想定される。富士山が山体崩壊するような噴火まで想定されていない。

 今後、関東での直下型地震、東海から南海にかけての大地震、噴火などが懸念される。

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 日本列島は過去に大きな地震や津波に何度も襲われていながら、そのような巨大な地震や津波を想定した防災対策がほとんど取られていなかったということだ。とりわけ原発の建設に関していかに史実を無視した甘い想定がなされていたのかと思うと、今さらながら腹立たしい。「災害は忘れたころにやってくる」とは良く言ったもので、過去の大災害も体験した人が亡くなり何十年、何百年も経つと忘れ去られてしまうのだ。忘れられないようにと刻まれた石碑すら、ビルの谷間に埋もれて忘れ去られている。

 そして忘れ去られた状態で、都市が巨大化して高層ビルが立ち並び人口過密状態になってしまった。マグニチュード8とか9クラスの大地震や大津波が次々と日本列島に襲いかかり、富士山が噴火するようなことが自分の生きている時代に来るかもしれないとは、大方の人が思っていなかっただろう。考えただけでも恐ろしい。

 大地震、大津波、そして原発事故がいつおきてもおかしくないという苛酷な時代に突入したようだ。気を引き締めなければならない。地震や津波を避けることはできないので、あとは被害を少なくするための対策をたて、備えてしていくしかない。

 私は見なかったのだが、同じ日に地震予知に関する番組もあった。以下がその動画。国際地震予知研究会の宇田進一理事長が、3.11にも匹敵する地震の再来について話をしている。宇田氏はさざなみ状の雲である大気重力波に着目し、1年以内にマグニチュード9クラスのアウターライズ地震(海溝の外側で起きる地震)があると予測している。この場合、再び大きな津波が想定される。

スクランブル 謎の雲で地震予知
http://www.youtube.com/watch?nomobile=1&v=Nz860ORaJGQ 

 こうした地震予知を民間に頼らなければならないとは、なんとも情けない国だ。「地震ムラ」があるのだろう。

2012年1月14日 (土)

青山貞一氏が繰り返される津波被害は人災だと問題提起

 東日本大震災で津波が住宅を押し流していく映像を見たとき、津波の大きさと次々に家や田畑が飲み込まれていく様子に息をのみ呆然とした。それと同時に、昔から何度も大津波に襲われている三陸地方なら多くの人が大地震のあと速やかに高台などに避難したのではないか、そうであってほしいと願った。しかし現実は多くの犠牲者が出てしまった。

 震災後には日本中が被災地の復興を願い支援している。しかし・・・被害にあったところをそのまま復興したなら、また百年とか数百年後に同じ被害に遭うだろう。ところが「復興」という声ばかりで、教訓を活かすような指摘はほとんど聞こえてこない。あの被災地を同じように元通りにしたら、将来大津波に襲われたときに街は壊滅状態になり犠牲者と大量の瓦礫を生みだすのではないか。そういうことを考えて復興計画をたてているのだろうか? 私にはそのことが不思議でならなかった。

 これは津波に限ったことではない。たとえば火山噴火でもそうだ。2000年に有珠山が噴火したときも、山麓でさまざまな被害が出て危険地域に住む人々は避難をした。しかし、火山活動が治まるとまたすぐに人が戻って復興をするのだ。いつかまた噴火することが分かっていながら再び危険な地域に住みつづけようとすることに私は大きな疑問を感じた。

 洪水対策なども同じだ。頻繁に洪水被害を受けるようなところは農地にし、人家は高台や川から離れたところに建てるべきだと思うのだが、洪水はダムや堤防で防ごうとしか考えない。自然に逆らうような土木工事ばかり行うのがこの国のやり方だ。だから河川の近くに平気で住宅地を造成し、洪水被害が起きれば「堤防のかさ上げや強化をしろ」「ダムを造れ」ということになってしまう。

 人口密集地はともかくとして、北海道などでは河川の近くでは宅地開発を規制したり、家の建て替えなどをきっかけに高台に移転してもらうなどの対策がとれるのではなかろうか。場所によっては高床式住宅を義務付けるという方法もあるだろう。しかし、そういう話は聞いたことがない。

 災害にあうことが十分予測できるのに、同じところを復興してそこに住み続ける。私にはこの日本人の感覚が分からないし、災害が起きる可能性の高いところに人を平気で住まわせる国や自治体は不可解でしかない。

 青山貞一氏は東日本大震災の津波被災地の現地調査を行い、津波被害の半分は人災だとの指摘をしている。過去の記録から大きな津波に襲われることが分かっているのに、歴史に学ばずに同じような被害を繰り返しているのが日本という国だ。その責任は行政にもあり、半ば人災だというわけだ。これは私が考えていたことと同じだ。以下の動画をご覧いただきたい。

青山貞一:繰り返される津波被害の半分は人災?
http://www.youtube.com/watch?v=ZeVrP2YTxAs 

 以下にこの動画の要約を紹介しておく。

 東日本大震災の被災地である岩手県、宮城県、福島県に7回現地調査に行った。特に甚大な津波被害があったのは岩手県大槌町で死者と行方不明者で1500名近い被害があった。南三陸町と陸前高田市もほとんど壊滅状態になった。

 三陸はリアス式海岸のため地形によって津波被害を受けやすい。リアス式海岸の下の部分は地形上大きな被害を受ける。宮城南部の仙台市より南、福島のほぼ海岸域は平坦な地形がつづいている。このようなところでは海から数キロ離れていても津波が押し寄せる。津波が平野を遡上して被害をもたらした。

 被害の最前線は漁港で、健在な漁港はほとんどない。松島地域の海沿いはかなり被害を免れたが、それ以外は壊滅的だった。市場がこわされ水産加工の工場も壊され復興が予想以上に遅れている。福島北部の新地町漁港は船を沖合に持って行ったので75%の漁船が無事だった。しかし、家に残っていた家族が被災した。

 石巻北部の大川小学校は鉄筋の立派な校舎だった。河口から数キロあったので津波がこないと思って避難しなかった。学校のすぐ裏手に山があったのに小中学生が74名、教員ら10名が亡くなった。

 仙台市山元町の中浜小学校は海からすぐのところにあり、壊滅的被害を受けた。岩手、釜石市の唐丹町の小学校は過去に何度も津波の被害を受けているところだった。

 現地調査や資料によると、明治三陸津波(1896年、死者の数は今回と同じくらい)は今回と同じくらいの津波だった。貞観三陸津波(869年)はかなり規模が大きかった。決して1000年に一度ではなく、もっと頻繁に大津波に襲われていた。1000年に一度というのは東電などの責任逃れのためではないか。

 旧内務省の資料や、吉村昭氏の「三陸海岸大津波」という本を見ても分かるが、同じことを繰り返してしまっている。高台の20メートルくらいのところに家を移せばまず助かっただろう。

 岩手では数十世帯が移転する高台はあるが町ごと高台移転はできない。高齢者は生まれ育った町に執着する。こうしたことが低地に住み続ける要因になっている。しかし、それ以上に問題なのは、国や自治体の責任としてお金をかけてでも危険なところには住まわせないようにすべきだ。なぜ国や自治体は危険なところに建築確認や開発許可を出すのか。安易に許可を出す行政に問題がある。

 グーグルで神社の位置を地図上にプロットしたら、神社は高台にあって残っていることが分かった。津波の教訓が生かされたのに、一般住民には生かされなかった。

 明治三陸津波の頃は巨大堤防はもちろんあり得なかった。そのあとに日本の土木事業の一環として巨大な防波堤、防潮堤が造られた。釜石湾の入り口に1200億円かけて巨大な防潮堤をつくったが、それが壊れた。住民は防潮堤で防げると思ったことも被害の拡大につながった。

 釜石市の唐丹町の小さな漁港は明治三陸地震で大きな犠牲者が出た。そのあと国は高さ12メートル奥行き10メートルの防波堤を造ったが、今回の津波で中央部分が壊れて被害が出た。明治三陸津波で人々はいったんは高台に移ったが、その後どんどん下に降りてしまった。防波堤があるから漁師は下に降りてしまった。

 宮古市の田老地区も明治三陸、昭和三陸でも大きな被害が出たが、今回は防波堤が壊れてしまった。防波堤、防潮堤が役立たなかった。

 国や自治体は人命を重視しなければならない。下は住民が住めないような規制をするなどできたのではないか。行政が対策しなかったことで同じことを繰り返した。これは人災ではないか。

 また新しい堤防を造るといっているが、人的被害がこれだけ出ているのだから、安易に同じことをしてはいけない。土建的に仕事を大きくするということはやってはいけないのではないか。「死んでもいいんだ」ということでは済まされない。

 イタリアのソレント半島では高台に居住地をつくっている。これを見習って高台に家を立てることを模索すべきだ。

 瓦礫のことだが、茨城北部、宮城南部も汚染瓦礫がある。汚染された瓦礫を全国に拡散するのは原理的に間違っている。東京の落ち葉などを燃やしても放射性物質が出るのであり汚染の濃度はあまり関係ない。私は堤防を兼ねた放射性物質を含む瓦礫の処理を提案している。国が責任をもって被災地の汚染の酷い区画を放射性廃棄物の仮置き場にするべき。

 東京などが瓦礫の焼却や埋め立てを強権的にやっているのはおかしい。環境省はほとんど当事者能力がない。こういう人たちに任せていいのか危惧している。

 除染に関しては、原発の建屋をつくったゼネコンが除染でも元請けとなっている。除染はものすごくお金がかかるのだが、一番の元請けは日本原子力研究開発機構で3割ほど取っている。ちゃんとした議論、合意形成がないなかで国がゼネコンに発注しており、一番問題の多いゼネコンが元請けになるなど論外なこと。除染でいったん線量は下がるかもしれないが、また汚染される懸念がある。除染したものをどこにもっていくのか。海に流れ込んでしまうという問題もある。

 日本型の公共事業の種にされてしまっている。日本は民主主義国なのか。子どもたちの将来のためにお金を使わない。日本というのはどうにもならない利権天国であり、それによって国民が苦しめられている。

(要約はここまで)

 青山氏の指摘にはうなずくばかりである。この国は人命より利権がらみの大型公共事業のほうが大事なのだろう。津波被害や原発事故では何よりも人命第一で対策や補償をしなければならないのに、相変わらず利権がらみの土木事業にお金を使おうとしている。狂っているとしか思えない。

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